奈良県保険医協会

メニュー

改正国税通則法施行を控えて―納税者自身が権利意識を持つ事が益々重要に

 税務調査の手続きを定めた改正国税通則法が来年1月に完全施行される。

 同法によって、これまであいまいだった事前通知と調査終了の手続が明文で規定されたことは改善である。しかし、当初案にあった「納税者権利憲章」の策定、「書面」による事前通知・終了通知(更正決定等の場合も含む)などは確定法案では見送られた。税務調査において帳簿類等の提示・提出を罰則付きで強要すること、税務調査の遡及期間を5年へ延長、調査官による修正申告の強要の合法化、調査終了後の再調査権の創設、零細事業者への記帳義務化など、納税者の義務強化の項目は法制化された。

 書面による事前通知は明文化されなかったが電話等での事前通知が義務化された。
 「①調査を開始する日時、②調査を行う場所、③調査の目的、④調査の対象となる税目、⑤調査の対象となる期間、⑥調査の対象となる帳簿書類その他の物件、⑦調査対象納税者の氏名および住所、⑧調査担当職員の氏名及び所属部署等、⑨①および②は変更可能であるという説明、⑩③~⑥の通知以外の事項について非違があった場合は改めて通知しなくても質問検査できるという説明」が必ず通知されることになった。納税者と顧問税理士の双方に調査開始の事前通知が行われるが、顧問税理士を置いていない場合はメモをとるなどして慎重にこれらの項目を確認することが重要だ。

 調査で申告漏れなどが発覚し追徴課税する際、原則として全ての納税者に課税理由を説明するよう義務付けたことも改善点である。税務署の事務が増えることから、調査件数自体は減るのではとの観測もある。

 他方で、予想される2つの変化として徴税権限の強化が図られたとして、①強権的調査、対応が増えること、②調査手続が重視され、新たなルールができてくることが挙げられる。

 帳簿書類等の提示・提出と「留め置き(持ち帰り)」ができるという規定も定められたが、留め置きについては、①調査先がせまくスペースがない、②調査先にコピー機がない等の合理的理由がある場合に限り納税者の理解の上で行うとされており、慎重な対応が求められる。

 カルテの提示・提出やコピー等については、従来通り医師等の守秘義務に配慮するという文言が含まれ、提出は任意で義務ではないことを認識することが大切である。

 今改正については、いくつかの改善を含むが、同時に税務調査権限の拡大という懸念もぬぐえないため、納税者自身が権利意識を持って対応に当たることが益々重要になってくる。

【奈良保険医新聞第365号(2012年12月10日発行)より】


主張

さらに過去の記事を表示