奈良県保険医協会

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国民を統制するマイナンバー法施行

 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」マイナンバー法がこの10月5日から施行された。赤ちゃんからお年寄りまですべての国民一人一人に番号が与えられ、10月中旬には住民票に記載のある全住民に個人番号通知カードが届けられる予定である。原則として一度与えられた番号は一生変わらない。個人と設立登記された法人、法人格を持たない「人格なき社団」にも一律番号が付けられる。来年1月からは、申請すれば写真付きの「個人番号カード」が交付される。行政での文書発行や身分証明書としても使用できるとされている。
 9月3日にはマイナンバーの利用範囲を拡大する法案が成立した。来年1月から「社会保障」「税金」「災害対策」の3分野に限定して個人番号の使用が予定されている。さらに2018年から特定健診や予防接種履歴、個人の預貯金の情報管理に拡大される。個人の資産が完全に把握され、差し押さえや税務調査が増えるのではと懸念されている。
 個人番号は有無を言わせず付与されるが、個人番号カードについては必要ないと思われる場合は申請しなければ良い。そのことに対するペナルティはなく、後からでも発行することは可能である。問題点は番号の管理が大変で、漏れたらデータを悪用されたり、他人がなりすまして犯罪に巻き込まれる可能性もないとは言えない。米国ではマイナンバーに良く似た社会保障番号を悪用し、年金の不正受給などの被害が起きている。この制度については、情報漏洩と二次利用の危険性が以前から指摘されてきた。マイナンバーを扱う際には管理を徹底し、紛失したら賠償責任を問われるおそれがあるなど事業者にとって大変やりづらい中身となっている。良い点は、振り込み詐欺などの架空名義や他人名義の口座を見つけるのにマイナンバーが犯罪防止に役立つ可能性がある。
 税の申告時や社会保険事務でマイナンバーを記載しなければならないことになっている。保険医協会関係では共済(保険医年金)の書類にマイナンバーの記載欄が加わる可能性がある。また医療機関では従業員からのマイナンバーの取得と管理が求められ、取得すれば退職後に適正に破棄するまで厳重な管理を要し、紛失等での責任も問われかねず、誠にやっかいな代物である。今後の取り扱いがどうなるのかはわからない。事業者と国民の負担ばかりが増え、海外の例をみても必ず情報流出が起こり、このような制度は必ずどこかで無理が生じると言わざるを得ない。

【奈良保険医新聞第397号(2015年10月15日発行)より】


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