奈良県保険医協会

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保険医に一方的な疑いの目を向ける~協会けんぽ奈良支部が患者調査

「〈医師-患者〉の関係を損ねかねない」「不愉快きわまりない」――協会けんぽ奈良支部が被保険者等(患者)に「受診状況調査」

 昨年12月下旬、整形外科を標榜する会員(開業医・A医師)から寄せられた質問を端緒に、協会けんぽ奈良支部が、その被保険者(またはその扶養家族)に対して、個別の医療機関を特定して具体的な受診状況について文書による調査をおこなっていることが判明しました。A医師を通じて調査票のサンプルも入手しました。

 A医師によれば、複数の受診患者さんから来院時に窓口や医師へ、あるいは電話で照会があって、このような調査が行われていることを知るに至りました。しかし、当該医療機関には、協会けんぽ奈良支部からは一切の通知はありません。したがって、同種調査が他で実施されていても、当の医療機関では承知していないことも考えられます。寄せられた情報によれば、A医師の診療所のほかに、整形外科だけでも4件ほど同様の調査が行われているといいます。さらに、他科でも調査が行われている模様です。

 事態を重く見た保険医協会は理事会で検討し、次のような問題点があると話し合いました。

  1. 医療において重要な信頼関係を損ねかねない …法令にもとづく保険者の権限として、被保険者である患者に受診状況の「照会」がおこなわれているとはいえ、患者に不審や無用の心配を招く恐れがあり、〈医師(医療機関)-患者〉間の信頼関係を損ないかねない手法であり、それは医療が信頼関係を重要な要素としておこなわれていることを考えれば看過できない。さらには、患者(国民)の一部にある医療不信を助長しかねない。今回の調査の理由として、協会けんぽ側は、診療報酬算定の疑義(誤り)の確認を挙げているようだが、事務的な問題とその是正であれば、第一義に当該保険医療機関へ連絡があるべき。
  2. 患者の誤解や不審を招いても医療機関側に理由が見えない …A医師の例では、患者から当該保険医療機関へ申し出や照会があったので、当該医療機関(担当の保険医)の知るところとなったが、そうでなければ仮に患者と医療機関側との間ですれ違いが生じてもその理由が当該医療機関側にはまったく認識されないこともあり得ると憂慮される。
  3. その他にも問題 …質問票の内容を見ていくと、上記の問題だけにとどまらない懸念もある。

 協会では、複数の医療機関へ調査がおこなわれているという整形外科の関係者には手紙で概要を知らせて注意を喚起し、同様の事案に接しているなどの情報があれば協会事務局への情報提供を呼びかけました。

 これに応えて複数の情報が寄せられ、同様の書類を患者さんが持参して記入の相談があったとの連絡がありました。情報を寄せた保険医は「レセプトを見ればわかることをあえて患者さんに質問して調べているのは(レセプトを)疑っているということ、人を馬鹿にしている」「不愉快きわまりない」など憤りの感想を述べていました。

 しかも、照会文書には健保法の抜粋を掲載、「(第59条)保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは保険給付を受ける者に対し、文書その他の物件の提出もしくは提示を命じることができる。/(第121条)保険者は、保険給付を受ける者が、正当な理由なしに、第59条の命令を拒んだときは、保険給付の全部または一部を行わないことができる」とわざわざ明記しており、患者から医療を取り上げることをちらつかせて回答を迫るという強圧的なもので、突然、このような書面を受け取った患者を不安に陥れるものです。

 協会理事会では今後、さらに情報を把握したうえで、協会けんぽ奈良支部に前述の問題点を憂慮する立場から申し入れ等をおこなうことにしています。

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