奈良県保険医協会

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歯科・新点数検討会(3月23日)に100人あまりが参加

 4月から実施予定の診療報酬改定をひかえ、奈良県保険医協会は3月23日(日)午前、歯科・新点数検討会を奈良県中小企業会館で開催しました。会員の歯科医師を中心に県下各地から100人あまりが参加しました。協会役員が今回の改定内容をテキストに沿って解説したほか、この改定内容では「歯科医療の危機的状況を打開するには程遠いもの」だとして、診療報酬をさらに引き上げることなど8項目にわたる決議(後掲)を確認しました。

 検討会の冒頭には鈴鹿正剛歯科部長が挨拶に立ち、改定内容の特徴・問題点にふれて、低医療費政策を撤回させるべく、患者さん、国民の理解を広げることを強調しました(要旨はこちら)。

 改定内容は、要点の解説を鈴鹿歯科部長が、改定事例の症例解説は胡内秀規理事がそれぞれ、テキスト「2008年改定の要点と解説」に沿って講演しました。また、4月から始まる後期高齢者医療制度と、就学前の子どもの一部負担割合の変更など、若干の要点について協会事務局が補足の説明をしました。

 閉会前に、今次改定に対する声を挙げようと西野恒理理事が決議案を提案し、参加者の拍手で確認しました。森本新一歯科副部長が司会を務めました。




2008年診療報酬改定
歯科・新点数検討会でのご挨拶

2008.3.23.
歯科部長  鈴鹿 正剛

 日常診療でお忙しい中、2008年歯科新点数検討会にご参加いただきまして、ありがとうございます。

前回の屈辱的な改定に対して

 前回の改定は、歯科医にとって正に屈辱的な改定でした。
 これに対して私達は、27万筆の「保険でよい歯科医療を求める」請願署名、200を超える自治体の意見書採択、「崩壊しつつある日本の歯科医療」等の冊子の普及、厚生労働省との交渉、奈良県選出国会議員への現状の理解と陳情などを粘り強く行ってきました。
 しかしながら、政府の社会保障費2200憶円削減が前提にありますので、今回の技術料本体0.42%の引き上げをどう評価するかは難しい所です。

今回の改定の特徴

 今回の改定の特徴を、ざっとご説明させていただきます。
 一部の基礎的技術料が引き上げられました。
 メタルコア、テンポラリークラウンなど新技術が導入されました。
 患者さんへの文書提供については、5項目が廃止され、それ以外は3カ月に一回が原則になり、是正が見られます。
 その一方、初再診にラバーダム加算の包括、充填に際してのエナメルエッチング、研磨の包括、4つの補綴関連検査を顎運動関連検査として低点数での統合、歯科訪問診療時の初、再診料外しなど、医学的に根拠のない相変わらずの歯科特有のマイナスでの包括化が見られます。
 また、「か初診」から歯科疾患総合指導料に変わり、今回、歯科疾患総合指導料は廃止され、歯科疾患管理料が新設されました。これは疾患別の指導料を統合して、口腔を一単位として管理するもので、全ての歯科疾患を対象としています。
 現在、患者さんの同意と文書提供を算定要件としていますが、施設基準や他院との併算定禁止、特掲診療の算定制限など厳しいシバリは無いように思われます。ただし、治療計画に沿った治療終了後2カ月間は初診が起こせない、初診の算定制限の問題、さらに新設の歯周病安定期治療に関しては、歯科疾患管理料の算定が条件となっていますので、誘導が行われています。
 従来の指導料が廃止、統合されたために、歯科疾患管理料を算定しなければならない状況にありますが、これが定着した後(のち)に、様々なシバリが強化されることに注意する必要があると考えます。
 今回の改定で、医科では後期高齢者の管理料算定に、あの「か初診の如き」算定要件が加えられたと聞いています。
 今回導入されます先進、新規技術は 高額な機器、材料等の購入額に見合わない低い評価です。普及を図るなら、中医協での検討が不可欠ですが、十分検討されたとは考えられません。

医療費抑制政策の撤回を世論に

 いま、私たちに残された道は、患者さんに、国民に、国が推し進めている医療費抑制政策、社会保障費の削減という間違った政策の撤回だということを、十分に知っていただくことだと考えます。
 そのために、私たち歯科医だからこそできることもたくさんあると思います。

 皆さま方には、保険医協会へのより一層のご支援をお願いいたしまして、ご挨拶とさせていただきます。

(一部要約。見出しは編集部)




歯科新点数検討会 決議

 08年度歯科診療報酬改定は、技術料本体0.42%のプラス改定となり、初・再診料はじめ一部の基本的技術料の引き上げや6項目の先進・新規技術の保険導入が行われ、私たちが強く要求してきた歯科疾患総合指導料の廃止もなされた。これらは、私たちが日本の歯科医療に甚大な悪影響を及ぼした06年度改定以降、改善のためにすすめてきた歯科医療の重要性の啓発運動と「保険で良い歯科医療実現」を求める運動の反映である。

 しかし、政府は社会保障費2200億円削減を強行して、医科、歯科、調剤を含めた全体の改定率をマイナス0.82%と4度マイナス改定とした。長年の低歯科診療報酬に加え、06年度改定による歯科医療費マイナス3.9%で歯科診療所と国民歯科医療を崩壊させつつあり、今次改定率程度ではその打開は決してできるものではない。

 改定内容でも、医学的根拠のない初・再診料の包括、歯科訪問診療時の初・再診料外しがされた。歯科疾患管理料導入では、継続的な管理指導を選択できる患者とできない患者の格差が拡大されるだけでなく、歯科診療所は極めて低評価で長期に亘る歯周病管理や義歯管理を余儀なくされる。また在宅療養支援歯科診療所の施設基準に歯科衛生士の配置が盛り込まれたことで、後期高齢者の在宅歯科医療の後退が危惧される。更に新規技術の保険導入でも必要な機材、材料の購入価格に見合わない低い評価である。

 総じて08年度歯科診療報酬改定は、マスコミも報じる今日の歯科医療の危機的状況を打開するには程遠いものと指摘せざるを得ない。

 私たちは、歯科医療の崩壊を食い止め、患者・国民が必要とする、安全で良質な歯科医療の保険での提供と歯科医療機関の経営改善ができるよう下記事項の実現を強く求める。

  1. 本体0.42%の引き上げでは、長期にわたる歯科低診療報酬に加え前回改定でもたらされた歯科医療機関の疲弊状態は到底解消できず、歯科医療崩壊の危機を打開できない。緊急に財源措置を講じ、診療報酬をさらに引き上げること。
  2. “歯科疾患管理料による継続的な管理を選択できない患者”への指導を評価する診療報酬を設定すること。
  3. 歯周病安定期治療、義歯管理料の評価を診療実態に見合ったものに引き上げること。
  4. ラバー加算、歯肉息肉除去手術の初・再診料への包括のような基本診療料への特掲診療料の包括をしないこと。
  5. 在宅医療の50/100加算項目を限定しないこと。また、在宅療養支援歯科診療所の施設基準における歯科衛生士の配置要件を当面外すこと。
  6. 歯科医学会の指針等を画一的に適用した審査、指導をしないこと。
  7. 金パラの市販価格と保険価格基準との大幅な乖離、逆ざやを早急に解消するため、次回10月改定を待たずに、基準の再改定など緊急是正措置を講じること。
  8. 今次改定実施後に中医協が行なう検証は歯科外来診療環境体制加算項目に限定せず主要改定項目については実施すること。
以上、決議する。

2008年3月23日

奈良県保険医協会 2008年診療報酬改定 歯科点数検討会
参加者一同

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