厚労省公表の公的病院再編・統合「再検証」リストの問題をめぐり、当会など4団体で共同声明
奈良県保険医協会はこのほど、県内の医療・社会保障関係3団体とともに、厚生労働省が公表した公的病院再編・統合「再検証」リストの問題について、下記の共同声明を発表しました。
▼厚生労働省による公的病院再編・統合「再検証」リストは撤回を
▼奈良県は県民不在の拙速な地域医療構想具体化協議をあらため、ていねいな議論を
令和2年1月17日厚労省通達「公立・公的医療機関の具体的対応方針の再検証等について」にもふれて
「病床削減ありき」のリスト公表に、厳しい批判が集中
昨年9月26日、厚生労働省(以下、厚労省)は再編・統合の必要性があるとして、全国424の公立・公的病院等(奈良県内の5病院を含む)の名称を公表しました。これは「地域医療構想」の具体化が遅々として進まないことへの苛立ちとも取れる、「ベッド削減先にありき」の発表であり、また424病院の抽出根拠も不明確であり、全国知事会の平井伸治社保常任委員長(鳥取県知事)が「リストを返上してほしい」と発言するなど、全国の病院や自治体関係者から、厳しい批判があがりました。
リストの「一定見直
し」も、基本姿勢は同じ。「修正」ではなく、きっぱりと「撤回」を
批判を受け、厚労省は9月26日付公表リストの再精査を行い、一定の修正を経て「確定版」の公表を準備しています。厚労省は、確定版リスト公表に先がけ、1月17日付通達で、あくまで「技術的助言」だと断ったうえで、各都道府県へ公立・公的「再検証対象医療機関」の内容精査と方針策定のための指針を示しました。その中で「(厚労省の)分析だけでは判断しえない地域の実情に関する知見を補いながら、議論を尽くされたい」として、「(厚労省が)設定した領域以外の一部の診療領域に特化し、疾患特性に応じて一定の急性期を有」する医療機関につき「慎重に議論」することや、「類似かつ近接」する医療機関にかかる判断につき「6領域ごとの…役割分担の方向性」の「協議」を丁寧に進めること等を指示しています。
しかし、準備中の確定版リストも「あくまで現状で把握可能なデータを用いる手法に留まるもの」と自らが言い訳しているように、抽出根拠に大きな変化はありません。私たちは、厚労省の姿勢に抗議するとともに、公立・公的医療機関「再検証」リストの「修正」ではなく、「撤回」を要請します。
奈良県・
竜つの病院も対象に。奈良県は拙速な結論を急がず、ていねいな議論を
9月26日に公表された奈良県内の5つの病院は、いずれも大変重要な役割を担っています。たとえば済生会の3つの病院は、地域のプライマリーケアを担い、救急や急性期の医療を提供しています。そして何よりも無料低額診療事業に旺盛に取り組み、低所得者層の医療アクセスを保障してきた貴重な病院であり、このような病院の再編・統合は不適切と言わざるを得ません。
奈良県は県内5病院の名指し公表に対し、抗議すべきですが、こともあろうか、荒井正吾奈良県知事は10月9日の記者会見の中で厚労省のリスト公表を評価する見解を発表しました。奈良県は、「地域医療構想」による医療機関の再編・統廃合のフロントランナーとなるべく、昨年秋より地域医療構想具体化の諸会議への公立・公的病院及び民間の急性期病院の参加を求め、この2月には2次医療圏毎の調整会議の開催など、民間病院を含む県内すべての病床の転換及び削減の計画を、年度内に完成させようとしています。それは、診療報酬改定を4月に控えて対応に忙殺される各医療機関から「熟考の機会」を奪うものであり、しかも地域住民の議論への参加を保障せず、無理やり
枠の中に押し込めるような議論の進め方であり、県民不在と言わざるを得ません。
私たちは、こうした県の姿勢に抗議し、県民の要望と地域医療の実情にそくした、冷静でていねいな議論がなされることを切に望むものです。
奈良県保険医協会 理事長 青山哲也
奈良民主医療機関連合会 会長 横山知司
奈良県医療介護福祉労働組合連合会 執行委員長 弘田嘉伸
見解
- 2022年12月23日第57回定期総会 決議
- 2022年7月29日理事長声明「安倍元首相の国葬に反対する」
- 2022年3月3日【声明】プーチンの暴走とロシアによるウクライナ侵攻に抗議するとともに、ロシア軍の攻撃中止とウクライナからの即時撤退を求める
- 2021年9月24日コロナ特例の診療報酬、9月末での打ち切り表明への抗議と10月以降の継続を求める緊急要請
- 2021年7月26日理事長談話「ヒロシマ・ナガサキ、そしてオリンピック」
- 2021年5月26日「75歳以上の医療費窓口負担2割化」法案、少なくとも今国会での審議・採決はやめて、コロナ対応に集中を
- 2021年2月24日理事会声明「日本政府の核兵器禁止条約への参加は唯一の戦争被爆国としての責務」
- 2020年12月13日第55回定期総会 決議
- 2020年11月14日声明:日本学術会議に対する違法・違憲の人事介入に抗議し、推薦された候補者すべての任命を求める
- 2020年9月18日奈良県へ要望:地域別診療報酬ではなく、すべての保険医療機関に対する給付金等の財政措置を求めます
- 2020年2月4日厚労省公表の公的病院再編・統合「再検証」リストの問題をめぐり、当会など4団体で共同声明
- 2019年12月25日第54回定期総会 決議
- 2019年4月23日健保法等一部改正法案の徹底審議を求めます
- 健保法等一部改正法案の徹底審議を求めます
- 2018年5月17日理事会声明:奈良県の医療の質を低下させ、空洞化、崩壊に導く「地域別診療報酬」―その導入も、検討も、断固として反対する
- 2017年11月21日声明:マイナス改定は容認できません/地域医療を立て直すために診療報酬・介護報酬の大幅な引き上げを求めます
- 2017年6月16日声明:「共謀罪」(「テロ等準備罪」)を新設する組織犯罪処罰法等改正案の採決強行・成立に抗議し、廃止を求める
- 2017年3月22日声明:共謀罪(「テロ等準備罪」)新設に反対します
- 2016年12月23日「高齢者いじめの負担増」の中止を求めます
- 2016年12月3日TPP協定を今国会で批准しないよう求めて、参院特別委員へ緊急のファクス要請―奈良県保険医協会
- 2016年10月25日TPP協定を今国会で批准しないよう求めて、衆院特別委員と地元国会議員へ緊急のファクス要請―奈良県保険医協会
- 2015年9月19日[声明]安全保障関連法案の強行採決、可決・成立に断固として抗議する
- 2015年9月4日参議院議員あて「安全保障関連法案の拙速な採決に反対し、同法案の撤回、廃案を求める」要請―奈良県保険医協会
- 2015年7月16日[声明]衆議院での安全保障関連法案の採決強行に強く抗議し、同法案の撤回、廃案を求める
- 2012年10月5日オスプレイの配備に抗議、撤回求める声明/理事長と反核平和委員長
- 2012年7月20日理事会声明「日本の核武装を想起させる原子力基本法の改悪に抗議する」
- 2012年7月2日理事長声明「消費税増税関連法案と『社会保障制度改革推進法案』の衆議院での採決強行に抗議し、参議院での廃案を要求する」
- 2012年6月8日理事長声明「改めて大飯原発の再稼働に反対する」
- 2012年4月20日理事会声明「大飯原発の『安全宣言』に抗議し、再稼働に反対する」
- 2012年1月20日理事会声明「アメリカの新型核実験に抗議する」
- 理事会声明「診療報酬マイナス改定は回避したが医療再生にはほど遠い改定率―改定率の見直し、引き上げを求める」
- 2011年3月22日福島原発事故に対する声明
- 2011年2月18日医療の市場化拡大で国民皆保険制度の崩壊へと向かうTPPへの参加には強く反対する
- 2010年10月8日〈声明〉犯罪捜査のプロを指導監査に活用する提案と、その問題点を認識しない厚生労働省に強く抗議する
- 2009年11月30日副財務相の診療報酬引き下げ発言に対し財務省へ抗議文~奈良県保険医協会
- 2009年11月6日厚生労働省の政務三役に、レセオンライン義務化撤回求める要請書を送付/奈良県保険医協会
- 2009年10月19日レセプトオンライン請求義務化に関する請求省令の改正案への意見
- 2008年8月25日集会アピール(後期高齢者医療制度の廃止をもとめる奈良県集会)
- 2006年6月14日国民から医療を遠ざけ、国民皆保険制度を壊し、高齢者に苛烈な負担を強いる医療制度「改革」関連法案の可決・成立に抗議する
- 2006年5月19日国民皆保険制度を崩壊させる医療「改革」法案の強行採決に抗議する
- 2006年1月10日(休載)
- 2005年12月20日診療報酬・介護報酬の大幅引き下げに抗議する
- 2005年11月1日国民皆保険制度の発展と逆行する医療構造改革試案に反対、患者負担軽減・診療報酬改善など求めて中央行動(10月27日)
- 2005年10月4日「制限回数を超える医療行為への混合診療導入」の中止と、診療報酬における、医療上の根拠があいまいな回数制限の廃止を求める緊急要請書
さらに過去の記事を表示