奈良県保険医協会

メニュー

〈声明〉犯罪捜査のプロを指導監査に活用する提案と、その問題点を認識しない厚生労働省に強く抗議する

 厚生労働省の省内で行った「政策コンテスト」において、現職の医療指導管理官が提案した、犯罪捜査のプロである警察庁や警視庁から出向者を受け入れて指導監査に当たらせるという提案を、一次選考で容認したことに強く抗議する。このような提案が二次選考に残ったことに厚生労働省の姿勢が問われる。大臣をはじめ幹部の責任は重大である。

 その提案は、「権限の相違はあるものの、悪を正し刑罰(行政上の措置)を科す点においては共通点があることから、犯罪(詐欺罪)に対するプロである警察庁や警視庁(捜査第二課=知能犯、詐欺、横領担当)からの出向者」を指導監査部門に受け入れる、という内容である。

 しかし、健康保険法には、監査における調査、質問又は検査についての権限は「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」(第78条第22項、第7条の38第3項)と明記されている。

 ところが提案者は、「指導監査については、刑事事件と異なり強制捜査権はないが、事実を聴取し処分するといった点では共通」などと提案資料に記載しているように、「指導」と「監査」の区別どころか調査と犯罪捜査の区別までも無視して、指導監査の関連法令・ 亮饂櫃鉾燭靴神睫世鮃圓辰討い襦・気蕕法◆嵒・廚鳳・厳坐碧,飽楾圓垢訃豺腓・△襪箸い辰燭茲Δ文・・擎未魎鋿圓任④襦廚函・埓・愼海髻嵌蛤畫楮此廚汎盈鷸襪気┐靴討い襦・/p>

 とくに「指導」は、行政手続法にもとづき「任意の協力によってのみ」実現され、なおかつ指導大綱により「診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う」とされており、処分を前提としたものではない。

 これら提案内容は、保険医を「指導」の段階から被疑者(犯罪容疑者)扱いするものである。このような提案が指導監査部門の担当者から提出されたことは、提案者がまったく不適格であるというだけにとどまらず、同省の基本姿勢が厳しく問われるものである。

 さらに、厚生労働省は、全国保険医団体連合会の代表者が本件について申し入れを行った席(9月2日)では、その問題点の指摘に対して「提案自体には問題はない」との態度に終始したという(「全国保険医新聞」9月15日付)。

 個別指導において、あってはならないことだが、当局側の強圧的あるいは横柄な態度があると指導を受けた会員から当会へ伝えられている。保険医を犯罪容疑者のように見る態度は 、すでに現場にある問題ともつながっているからこそ、上記の提案が持つ問題点を認識せず目をつぶる厚生労働省の姿勢を厳しく問うているのである。

 以上の趣旨から、この提案と、その問題点を認識せず放置する厚生労働省の対応に強く抗議する。

2010年10月8日
奈良県保険医協会
理事長 峯 克彰


見解

さらに過去の記事を表示