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60歳以上の雇用延長について

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

60歳以上の雇用延長について
【2010年1月】


 60歳近くになった職員から引き続き働きたいという希望が寄せられました。それに65歳までの雇用は法律的に義務付けられているというのです。65歳まで雇用しなければいけないのでしょうか。

A
 確かに改正「高年齢者雇用安定法」においては60歳以降65歳までの雇用延長が義務化されています。


 私のところは一応定年は60歳と決めています。60歳で辞めてくれというのは違法でしょうか。

A
 厚生労働省が作成したリーフレットによると、同法は継続雇用制度などの導入を義務付けたもので、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものでないとしています。


 よく分からない説明ですね。つまり人によっては60歳でやめてもらってもいいのですか。

A
 そうです。ただ制度を作り継続雇用すべき人を明確にする必要があります。


 ますます分かりにくくなりました。要するにどういうことですか。

A
 労使協定で継続雇用する人の基準を作りその基準を満たす人を再雇用するというのは問題ないということです。この基準も「事業主が必要とする者」などというあやふやなものではなく労働者自ら適合するかどうか一定程度予見できる基準でなければなりません。


 たとえばどのような基準ですか。

A
 厚生労働省が公表している基準では直近の健康診断の結果業務遂行に問題がないこと、無断欠勤がないこと、一定の国家資格を有する者などがあります。厚生労働省も労使でよく検討して決めた基準は尊重するといっています。


 雇用延長をすぐに65歳にするのですか。

A
 経過措置があり平成22年3月31日までは63歳、平成25年3月31日までは64歳、平成25年4月1日以降は65歳まで雇用が義務付けられています。これは厚生年金の男子の定額部分の支給開始に対応しています。ただ中小企業では平成23年3月31日までは労使協定に拠らなくても就業規則で定めればよいことになっています。


 そうすると必ずしも定年を65歳にする必要はないということですか。

A
 そうです。改正高年齢確保法は①定年の廃止②定年の引き上げ③継続雇用制度(再雇用制度)一のどれかを選択するよう求めています。定年制の廃止は年齢を理由に退職させることができませんから、かなり限られた事業所になると思います。定年の延長はいいと思いますが、基本的には労働条件を維持することになりますから賃金の引き下げが難しくなります。継続雇用はまったく新しく労働条件を設定できます。


 定年延長は労働条件を変えることができないなら、やらないほうがいいですか。

A
 それはなんともいえません。統計的には定年の3年前から急速に労働者のモチベーションが落ちるといわれていますが、嘱託やパートになる継続雇用では、今までのモチベーションは期待するのが無理です。特に幹部は「金」でなく「仕事」に生きがいを感じている人が多いですから、安易に労働条件を下げることはすべきでないと思います。


 賃金が下がっても引き続き働きたい人は継続雇用でいいわけですね。

A
 そうです。そのような人は在職老齢年金、雇用保険から支給される継続雇用給付を組み合わせていくことが大切です。極端な話、1週25時間で働くと社会保険に加入しませんから年金はまったく減額されずに支給され、しかも雇用保険に加入していますから継続雇用給付金も支給されます。このような制度をうまく使い手取り額はそんなに減らないで引き続き雇用される人もいます。継続雇用には雇用保険、年金、税金の知識が必要ですからある程度このような知識に精通した人に相談しながら進めるといいと思います。

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