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高価な医療機器を壊した職員に損害賠償請求できるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

高価な医療機器を壊した職員に損害賠償請求できるか
【2014年9月】

Q
 職員が高価な医療機器を不注意で壊してしまいました。当人に弁償させたいと思っています。弁償額を何回かに分けて給料から引いてもいいでしょうか。

A
 職員に賠償させるということですが、就業規則には職員が損害を与えた場合に医院が損害賠償請求する旨の規定はありますか。

Q
 当院は職員か6人ですから就業規則はありません。

A
 労働契約書などではどうですか。

Q
 そのような規定はありません。規定がなければ損害賠償請求できないのですか。

A
 いいえ、請求できますが、一般的に資力に乏しい従業員にとって大変なことですから、急に損害賠償と言われてもびっくりすると思います。

Q
 損害を与えた以上、損害賠償するのは当たり前ではありませんか。

A
 そうではあっても、一般的に従業員が働いてくれて利益が出るわけですから経営者も恩恵を受けています。したがって、従業員の方がわざとやったことでない限り、生じた損害を一方的に全額職員に押し付けることはできないと思います。

Q
 それでは何割くらいなら職員に費用負担させることができますか。このような事例はたくさんあるのではないですか。相場はないのですか。

A
 このような事件の裁判を数多くやっている弁護士に聞いても、すぐには分からないと思います。中には、労働者に損害賠償させることに疑問を持っている弁護士もいます。それでも最近では金銭賠償を求めるケースが増えて裁判事例も積み重ねられています。一般的には50%以上損害賠償させることは無理です。判断の基準としては①労働者に故意や過失があったか。その程度はどのくらいか②労働者の地位、労働条件③損害賠償についてこれまで注意し指導してきたか④保険に加入していたかどうか――など総合的に判断されます。実際には、裁判例では労働者に業務遂行上の注意義務違反はあるものの重大な過失までは認められないとして使用者の損害賠償請求を棄却している場合が多いようです。

Q
 重大な過失があった場合の、相場があるでしょう。

A
 会社の自動車を壊し55万円の損害に対して労働者に2万8000円弱の損害賠償を認めたものもありましたし、総額の4分の1を支払ったからいいとされた事例もあります。いずれにしろ今回の場合は職員の方とよく話して決めてください。私からはいくらが適当とは言えません。

Q
 損害賠償額が決まったら給料から天引きしていいのですか。

A
 労働基準法には賃金全額払いの原則がありますから税金でもない限り労働者の同意が必要です。

Q
 今後職員に医療機器を大切に扱わせるため、過失で医療器具を壊した時は給料から、例えば1万円天引きすると決めることはどうでしょうか。

A
 それははっきり労働基準法で「損害賠償額を予定する契約はしてはならない」(労基法第16条)として禁止されています。経営の四要素「人・物・金・情報」と言われています。情報漏えい、パワハラ・セクハラなど、医療経営には、このすべてにりスクがあります。人がやる以上、必ずりスクは発生します。今回のような事件を契機に「社員教育」「動産総合保険の加入」等りスク対策を検討してください。

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