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頻発する労働局雇用均等室の調査への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

頻発する労働局雇用均等室の調査への対応
【2012年8月】


 労働局の雇用均等室から雇用管理の実態調査をすると言ってきましたが、このような調査には応じなければならないのでしょうか。

A
  「短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律」に基づき事業主に報告を求めることができます。実際に受けたと聞いたことはありませんが、法律上は罰金制度があります。しかし、罰金があるから調査に応じるというのではなく、むしろこれをパートの方や女性労働者の労働条件をチェックする好機ととらえたほうがいいと思います。無料で質のいい「労務監査」を受けると思ってください。


 どのように対処すればいいのでしょうか。

A
  「短時間労働者雇用管理状況ヒアリング票」が来ると思いますが、重視されているのは「文書」で労働条件を明示しているかどうかです。これについては労働基準監督署も同じです。採用の際、文書で労働条件を明示することは労働基準法で義務付けられています。


 文書というとどのようなものですか。

A
  労働条件通知書です。これは各都道府県労働局のウェブサイトでダウンロードできます。均等室が重点的に聞くのは労働条件通知書に①昇給の有無②退職手当の有無③賞与の有無――が記載されているかなどです。


 パートにも昇給や退職金、賞与は必要なのでしょうか。

A
  「これらの制度がないのなら、その旨はっきりしてください」ということです。そのほかパート労働者用の就業規則の有無も聞かれます。


 パートが数人しかいなくてもパート用の就業規則は必要でしょうか。

A
  パートの方がいるのなら作成すべきです。
  パート用の就業規則がない場合、正社員用の就業規則が適用されてしまいます。ある事業所では、パートの方から「就業規則に記載されている住宅手当がなぜ私にはないのか」と聞かれ困っていました。そのほかパートと正社員の責任の程度が異なるか、異なる場合は具体的にどう違うのか、などが聞かれます。


 育児休業が終わって復帰する予定の職員が、これまでの1日8時間勤務を6時間勤務にしてくれと言ってきましたが、これも応じなければいけないのでしょうか。

A
  育児・介護休業法により今年(2012年)の7月1日より100人以下の事業主も短時間勤務制度などが義務付けられるようになりました。


 事業主にとっては対応が難しいですね。

A
  確かに大変な面もあります。しかし、仕事にもなじみ、能力ある職員を定着させることになりますからメリットもあると思います。しかもこの制度を導入すると「子育て短時間勤務支援助成金」を受けることができます。


 どんな時、どのくらい支給されますか。

A
  従業員100人以下の小規模事業主の場合は、少なくとも小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が利用できる短時間勤務制度を設けて利用者が出た時に支給され、1人目が40万円、2人目以降は15万円で、延べ5人までです。大中規模事業主にも同様の制度があります。

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