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退職予定者が年次有給休暇を請求

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

退職予定者が年次有給休暇を請求
【2016年7月】


 20年近く勤務していた職員が退職を申し出、「これまで年次有給休暇を取ったことがなかった。年休は40日あるはずなので年休を消化してから退職する」と言ってきました。こんなことを認めなければならないのでしょうか。


 年次有給休暇は請求があれは認めなければなりません。


 今までこんなことを請求してきた職員はいません。みんな引継ぎをきちんとして退職していきました。今回こんなことを認めると、みんなまねをするのではないでしょうか。当院のような小さな診療所では有給休暇など無理です。私が勤務医の時は有給休暇など取ったことはありませんでした。


 実は最近、このようなトラブルが増えています。今までトラブルが起きなかったのは、労使ともに労働基準法をはじめ労働法に無知であったため、トラブルが表面化しなかっただけです。また仲間に対する遠慮もあり、有給休暇の権利を自ら放棄してしまうということもあります。ある薬局で年休を申し出た薬剤師に「取ってもいいけど、みんなに了解を得てね」と返事をしたところ、その薬剤師は「みんな忙しそうに働いているので、とても言い出せなかった」とのことで、年休は取りませんでしたが、しばらくして退職していきました。


 何か対策はありませんか。引継ぎくらいきちんとしてもらいたいのです。


 まず、これからは年休を取れるように体制を整えていくことが大切です。今回の場合、現実的には引継ぎに必要な日数分、退職日を遅らせてもらうことなどです。


 引継ぎをしない場合「退職金を支払わない」と退職金規定にありますが、このような場合、退職金を支払わないということもできますか。


 理論上可能なように見えますが、裁判になると、引継ぎをしない程度では「永年の功を抹消するほど」のものでないとして退職金不支給は無効になりがちです。ある診療所ではこの規定に基づいて退職金を不支給にしたところ、労働局の相談員から8割は支払ったらどうかと連絡があり、それに従ったことがあります。


 年休を使ってからというと退職日は40日後ということになりますか。


 いいえ。休日はもともと労働義務のない日、休暇は労働義務のある日に労働を免除する日ですから、休日に年休をとることはできません。休日を除いて40日後となります。


 当院は完全週休2日制で、祝日もありますから、退職日は2力月後になってしまいます。


 法的にはそうなります。よく話し合って決めていただくしかありません。


 例えば、引継ぎのためある程度出勤し、消化できない有給休暇を買い取ることはどうでしょうか。


 有給休暇は在職しているからこそ権利があり、退職すると権利はなくなります。ただし、権利がなくなった年休を買い取ることは違法ではありません。

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