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退職した職員がパワハラがあったと労働局にあっせん申請

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

退職した職員がパワハラがあったと労働局にあっせん申請
【2020年3月】


 労働局からあっせんの通知が来ました。退職した職員が労働局に申請したようです。パワハラがあったということです。


 思い当たることはありますか。


 きつく注意したことはありますがパワハラなどと言われるようなことはありません。そそっかしい職員で一度医療器具を落として破損したことがあり、かなりきつく注意したことがあります。これなど当然のことではないですか。大体こんな「あっせん」に応じなければならないのですか。


 応じなくても処罰されることはありません。しかし、こじれる前に無視しないで「あっせん」には応じ、話し合いで解決する努力をした方がいいと思います。


 あまりにも法外な要求の場合は、どう対応すればいいのですか。


 その時は断ればいいのです。労働問題専門の弁護士に聞くと、問題がこじれ裁判になったとき、あっせんに応じた方が裁判官の心証をよくするということです。


 「あっせん」はどのように進めるのですか。


 通常は弁護士か特定社会保険労務士であるあっせん委員が別々に事情聴取し妥協点を探ることになります。パワハラの場合慰謝料請求ということになり、金額の妥協点を見いだせないか検討します。


 今後のためにあっせんには応じようと思っています。その際の注意点はありますか。


 どんな事実があったかを整理し、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士の意見を聞くといいと思います。必要であれば代理人として一緒に参加してもらうこともできます。もしもあっせんに一緒に行く場合は、事前に労働局の担当者の了解を得ておくことです。


 金銭解決で済むなら多少妥協してもいいと思っています。パワハラの相場はあるのでしょうか。


 明確なパワハラとグレーな場合で違います。「この程度ならこのくらい」ということはなかなか言えませんが、20万円以下が圧倒的に多いようです。私の経験した事例では経営者に落ち度がなかったのですが、それでも「あっせん委員」が気持ちとして「5万円くらいでいかがですか」と提案してくれたので、それで合意しました。当初労働者側が100万円以上請求していたので、労働者側の要求が過大であることも労働者に説得してくれました。
 パワハラ防止法は今年(2020年)6月より(中小企業は2022年度から)適用されます。背景には10年以上連続で労働局へ持ち込まれる労働相談が100万件を超え、そのうち最近の相談内容のトップが「いじめ」だということがあります。


 パワハラの定義はあるのですか。


 「職場において優越的な立場の者が、その地位を乱用して、部下の人格や利益を損ねるもので、職場における人格権侵害の一類型」と言われています。今後予防的な措置として就業規則などの見直しも必要です。

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