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賞与はどうしても支払わなくてはならないか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

賞与はどうしても支払わなくてはならないか
【2005年12月】


世間では平均賞与が5%増とか平均86万円とか自動車関係は100万円を超えるとか言っています。私のところはとてもそんなに支払うことはできません。賞与の時いつも悩むのですが、だいたい賞与は支払わなくてはいけないものですか。


一部大企業は景気のいいことを言っていますが私の回りの中小企業はまだまだ大変です。それと、賞与は賃金ではありますが法的にも必ず支払わなければならないというものではありません。労働基準法でも「賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与」はこの限りでないとされています。
賞与を支払うようになっていなければ、就業規則・賃金規程にも賞与について記載する必要はありません。労働基準法上、賞与とは「定期または臨時に、労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないもの」とされています。


しかし、どこでも夏と年末には出していますね。


ある意味では賃金の後払いという性格もありますから賞与を支給しているのでしょう。


いつも賞与を支払うと退職するものがおります。賞与をもらったら退職するというのはどうしても我慢ならないのです。今回賞与を支払うのを年明けにしようと思っています。私のところの就業規則には賞与支払日に在職しないものには支払わない旨はっきりと書いてあります。


確かに理論上は先生のおっしゃることは正しいように見えます。賃金規程には支給月は決まっていますか。


社会保険事務所に報告する必要もありますから7月と12月に賞与を支給すると書いてあります。


そうすると事業主の都合で賞与支払いが遅れたわけですから、本来の支給日に在籍していた人たちに賞与を支払わないというのはかなり無理があります。そのようなことはおやめになったほうがいいでしょう。


今回私の診療所で増収増益になったのは従業員が働いたからではありません。私が、誰よりも早く来て検診などをしたからです。賞与とは本来業績が上がった時成果を分配するものではないでしょうか。今回の成果はほとんど私の働きによるものですから、本来なら従業員に賞与を支払わなくてもいいと思っています。


先生のおっしゃっている意味は分かりますが、そのお考えは大変危険です。倒産する会社の社長の最大の特徴は、従業員に感謝の気持ちがないことです。従業員に対する感謝、従業員を褒めるといったことのない経営者はツキからも見放されます。


患者さんには感謝しますがそういうものですかねえ…。


それはそうですよ。先生が情熱的に医療に携わっておられるのはわかりますが、医療スタッフも先生に負けずに情熱的に医療に取り組む必要があります。スタッフも先生と同じように「医療に貢献したい、評価されたい」と思っているわけですから。


従業員を評価するといってもその評価が難しい。何とか公平な評価をする方法はありませんか。


公平に評価をしようと思うと、泥沼に入ってしまいます。先生の主観を信じ結局先生の好きなように評価するのが案外正確です。


そんなことでいいのですか。


先生の感覚に自信を持って決めればいいと思います。ただ、賞与を効果的に支払うのは競争ライバルよりも「チョット多くチョット早く」を心がけてください。

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