奈良県保険医協会

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診療報酬マイナス改定の衝撃

 一開業医の実感から、今次診療報酬改定の衝撃を述べたい。
 小泉改革のターゲットは郵政の次は「医療福祉分野だ」とばかり、電光石火の勢いで過酷な締め付けの大鉈が振りおろされた。その基本にあるものは弱肉強食、勝ち組負け組の二極分化であり、自己責任と言う国家の責任放棄である。
 血も涙もない冷徹な経済原理で社会を作ってゆこうとするいわゆる「小泉改革」。経済法則を人間社会に殖えつけるとどうなるか「実験」しているのだろうか。
 医療機関に向けては点数引き下げ、老人に向かっては自己負担増、障害者には働いてお金を払え、国民健康保険に金を出せないのなら、医者にかかるな! と保険証を取り上げる。国民年金を払わない医者は、保険医療機関指定を取り上げるぞ! と脅かしをかける。
 我々保険医も攻撃は最大の防御なりと国会請願、大集会などをしかけたが、保険免責などという妙なことをやってくるのは止めたが、マイナス3.16%がバーンと出てきてしまい4月1日から実施された。
 各医療機関は前回の引き下げで青息吐息でいるところ、大幅引き上げを要求していたのに逆にマイナス改定だ。器機の更新や、施設のリニューアル、患者サービ・ 垢皺萍澆暴・錣辰拭0緡天弍弔稜肪樟A阿任△襦・br> 1カ月が過ぎて月間・総点数の激減と患者数の著減のダブルパンチに見舞われた。改めて危機感が倍増した。昨年の統計だが、前回の改定で社保(奈良県)は人数・点数・金額とも約9%減少して未だ回復していない。昨年9月の統計でも前年同月比プラスマイナスゼロであったか。金額は更にマイナス2%であり、実質はマイナスに転じている。政府の医療費伸びの推計は全く実感と異なるのである。何ら医療費圧縮の必要性はない。政府の医療費負担圧縮のためにする偽統計である。
 一方、医療機関の経理をみると、筆者の法人では昨年経営が赤字になりそうなので院長報酬を減額することで処理せざるを得なかった。
 経常利益が無いに等しい。今年はマイナス3.16%分だけ赤字となり、総実日数の減少分がそれに追い打ちをかけてくる。単にマイナス3.16%なのではなく黒字部分3%の医療機関はそれだけで赤字転落となるのである。少しばかりの貯蓄をもってしても3年くらいしかもたないであろう。医療はサービス業であるから人件費を引き下げれば更なる患者減をもたらす。まさに絶体絶命の崖っぷちに立たされたといってよい。【奈良保険医新聞第287号(2006年5月10日発行)より】

主張

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