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育児休業は与えなければいけないか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

育児休業は与えなければいけないか
【2010年3月】


 近く出産する予定の職員がいて、産休明けからは育児休業を取りたいといっていますが、経営的に厳しく、困っています。

A
 今まではどうしていたのですか。


 大体、妊娠が分かると本人から辞めていきました。

A
 大手企業でも一部では、今も女性が妊娠すると引き続き働くことができない雰囲気のところがあります。しかし、そのような時代は終わりました。政府も育児・介護休業法で仕事と育児の両立を支援しています。


 解雇はできないのですか。

A
 解雇などの不利益取り扱いは禁止されています。特に産前産後の女子労働者の解雇は労働基準法で禁止され、違反に対する罰則も重く「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の懲役」となっています。罰金刑でも逮捕していいわけですから軽視できません。


 労働基準監督署が逮捕するなど聞いたことがありません。第一、労働基準監督署には留置場がない。

A
 いえ、労働基準監督署も逮捕することがあります。留置場は警察に使用料を支払って使うということです。


 育児休業を取った職員を解雇することはできませんか。

A
 これも、不利益取り扱いで禁止されています。


 罰則はありますか。

A
 罰金や懲役刑はありませんが、労働局の勧告があり、従わない場合は事業場を公表されます。特に改正育児・介護休業法が施行される2010年6月からは、労働局が報告を求めたのにしない場合や虚偽の報告をすると「過料」をとられる場合があります。


 以前は育児休業など考えられませんでしたが、ずいぶん厳しくなりましたね。

A
 育児休業が始まってもう20年近くなりますから、育児休業は世間の常識と考えたほうがいいと思います。


 改正法はわれわれの経営に影響しますか。

A
 主なところでは①3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(原則として6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者から請求があったときの所定外労働の免除を制度化する②看護休暇制度の拡充③父親も子育てができる働き方を実現させる立場から、父母がともに育児休業を取得する場合1歳2カ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする④父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする⑤配偶者が専業主婦の場合も、協定で育児休業を与えない制度を作ることはできなくなった―などです。


 診療報酬の大幅な改善が見込めない中で大変です。

A
 しかし優秀な女性職員を確保するには、育児休業制度の確立が不可欠です。勤めてすぐに退職することによる目に見えない損害はかなり大きなものがあります。この間の賃金、先輩が教える時間すべて無駄になってしまいます。私は賃金は経費でなく投資だといっています。育児休業制度を設けると100万円からの助成金、育児期間中は雇用保険から約50%の給付金が支給されます。しかも、社会保険料は事業主負担分も含めて免除です。ぜひ育児休業制度の確立を検討してください。

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