奈良県保険医協会

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経済優先の意図がより鮮明に―2014年診療報酬改定

 4月に2年に一回の診療報酬改定が実施された。今回の改定の土台となる考えは、①2025年に最大人口構成層である団塊世代が次々に70歳以上の高齢者となり2000~3000万人台になること②日本の経済力(GDPでは世界第3位)ならびに人口が下降線を辿っていくこと③現政府の経済優先の政策が弱者ならびに高齢者を切り捨てる方針であることであり、それらを踏まえて考えれば今回の改定にある厚労省の意図が見えてくる。
 今回の診療報酬改定で目立つ点は、①消費税に対応した初診料、再診料のアップ、②在宅医療において地域包括診療料ならびに地域包括診療加算の新設、③在宅訪問診療における同一日の同一建物の複数訪問診療に対する大幅な引き下げである。
 ①は、もともと医療は消費税対象にならないに関わらずこれまで消費税を甘受していたために払っている損税がさらに3%上がることになり、焼け石に水の形だけの補填である。
 ②は、複数の疾病を持つ多くの高齢者を外来で診るのは一人の医師に限定させる仕組みであり、患者さんの医療機関を少なくして医療費を抑えようという意図である。
 ③は、現在、在宅訪問診療を使命感を持って取り組んでいる医師の足を引っ張る措置である。在宅訪問診療自体が24時間対応など医師に相当負担が大きい医療であるにかかわらず、特殊な「医療紹介ビジネス」を名目に全体を大きく減算した。歯科でも同様に複数患者への訪問診療の点数を低くされた。歯科訪問診療ではその上に20分という時間基準による理不尽な点数区分も温存され改善が求められる課題となっている。
 この他に歯科では義歯管理が大きく再編され簡素化しリハビリに位置づけられた。将来に医療保険からの給付外し(介護保険へ移行)や義歯そのものをリハ装具とする地ならしの懸念も浮かぶ。
 約40兆円になる医療費のうち、ほぼ半分は薬価であり、それは製薬会社にまわるお金である。あとの半分は本来の医療行為に対する予算であるが、国は負担すべき社会保障はできるだけ減らして、むしろ大企業、防衛費に回したいという政策をとっている。
 消費税が5%から8%になった日に安倍首相は記者にマイクを向けられて堂々と「今回の消費税は全額を社会保障に使う」と言った。
 まったくのデタラメである。消費税で増収は約5兆円が見込まれるが、社会保障にまわるのはそのうち1割程度であり、ほとんどはゼネコンをはじめとする大企業に向けられるのが現実である。
 保団連、保険医協会としては今後も理不尽な改定内容には改善要求運動を続けていく。

【奈良保険医新聞第380号(2014年5月10日発行)より】


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