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社会保険は入社後すぐに手続きをしなければいけないか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

社会保険は入社後すぐに手続きをしなければいけないか
【2009年8月】


 就職して10日で退職してしまった看護師がいます。社会保険の手続きもしてしまいました。この場合社会保険料はどうなるのでしょうか。

A
 社会保険の資格を取得し、その月に退職した場合、社会保険料は1カ月分はかかります。


 社会保険料は健康保険と厚生年金を合わせると給料の約23%です。半額は本人が負担するとしても事業主負担も大変です。こういったことを避けるために試用期間中は社会保険に加入することを保留できないでしょうか。

A
 それはできません。通常は、入社後5日以内に社会保険の資格取得届手続きをすることになっています。


 雇用保険もそうですか。

A
 雇用保険は、翌月10日までとなっています。


 同じ厚生労働省の所管なのになぜ違うのでしょうか。

A
 厚生省と労働省に分かれていたときの名残でしょう。雇用保険は入社してすぐにやめる人もいるので少し様子を見てからでもそれほど実害がありません。


 先日テレビを見ていたら、2カ月してから社会保険に加入させる会社もあるといっていました。これはどうなっているのでしょうか。違法ではないのでしょうか。

A
 社会保険では一般被保険者とならない人に1週間に40時間働いても「2カ月以内の期間を定めて使用される人」がいます。そのため2カ月以内の雇用契約の人は社会保険に加入していないのです。ただ契約期間を超えたときはその日から社会保険の被保険者になります。


 それなら初めは2カ月の雇用契約をして働いてみてもらって、引き続き働いてもらいたい人であれば契約を「期間の定めのない契約」に結びなおし、そのときから社会保険に加入させればいいのではないでしょうか。

A
 確かに形式上はそのようなことも可能ですが「真意」がどうであったかが問題です。2カ月の契約といっても「試用期間」の意味であれば初めから加入させなければなりません。私も社会保険事務所の調査に立ち合ったとき同じような問題を指摘され社会保険事務所の担当官から「これまで一人でも2カ月で退職した方がいればともかく、この何年間かそのような方は一人もいないということは、この2力月の雇用期間というのは『試用期間』とみなします」といわれたことがあります。先ほどのテレビに出ていたという会社も実際には違法だと思います。


 そうすると、加入手続きはすぐにしなければいけませんか。

A
 病気・死亡・障害者になるなどの保険事故などがあるとトラブルのもとですから手統きは法的に義務付けられている方法ですべきです。


 ところで先ほどのすぐに退職した職員には支度金として20万円貸与しています。それなのに働いた10日分の給料を支払うようにいってきています。支払わないときは労働基準監督署へ訴えるといっています。働いた本人への給料の支払い分を、貸与した支度金の返却の一部に充当させることはできますか。

A
 給料を、勝手に貸与しているお金と相殺することはできません。労働基準法は法的に認められたもの以外は賃金を全額支払うことを義務付けています。


 しかし、本人に貸しているお金は返していただくわけですから充当は当然できるのが社会常識ではないでしょうか。貸したお金だって戻ってくるかどうか分かりません。

A
 先生のおっしゃっていることは分かりますが労働基準法は労働者保護の法律ですからやむを得ません。

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