奈良県保険医協会

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生活保護制度:患者さんや医療者の権利侵害になる「見直し」はしないで――政府へ要請書を送付/奈良県保険医協会

 奈良県保険医協会は11月9日、「患者さんや医療従事者の権利を侵害する『生活保護制度の見直し』は行わないで下さい」との要請書を、野田佳彦首相・三井辨雄厚生労働相・城島光力財務相へ送りました。
 要請書の内容は以下の通り。

2012年11月9日
内閣総理大臣 野田佳彦 殿
厚生労働大臣 三井辨雄 殿
財務大臣   城島光力 殿
奈良県保険医協会
理事長 坪井裕志

患者さんや医療従事者の権利を侵害する
「生活保護制度の見直し」は行わないで下さい

 貴職におかれては、日頃より国政の重責を果たされていることに心より敬意を表します。
 当会は、奈良県内の医師・歯科医師約1070人で構成し、保険医の生活と権利を守り、国民医療の向上を目指して活動している保険医の団体です。

 有名タレント親族の生活保護受給をめぐる報道等を契機として、生活保護制度の見直しが進められています。

 厚生労働省は来年度予算の概算要求で、生活保護費を削減するため、生活保護基準(最低生活費)の検証・見直しを予算編成過程で検討するとしています。財務省は10月22日の財政制度等審議会に来年度予算編成で生活保護費の削減を求める方針を示し、「医療扶助への一部負担導入」などを提案しています。

生活保護基準引き下げは、生活保護受給者の生活を圧迫するだけでなく、最低生活費の基準と連動する医療費の減免制度、介護保険料や障がい者の医療費の減免制度、高額療養費等の切り下げにつながり、多くの国民の生活に影響を及ぼすことになります。また、「医療扶助への一部負担導入」は、障害や疾病を抱える割合が高い生活保護受給者の受診抑制につながり、疾病等の重症化・重度化を引き起こしかねません。

 厚生労働省は9月28日、社会保障審議会の「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」に、「生活支援戦略」の素案を公表しました。素案には、「保護基準の切り下げ」とともに「扶養義務照会の強化」など制度から国民を締め出す内容が盛り込まれています。さらに素案には「医療扶助の適正化」と称し、「指定医療機関への指導等の強化」が盛り込まれています。これは生活保護受給者の医療をうける権利や医師の裁量権を侵害するもので、私たち医師・歯科医師の立場としては、とても見過ごすわけにはいきません。

 以上のことをふまえ、生活保護受給者をはじめとする国民・患者の生活と医療を守るため、以下の事項を強く要望いたします。

【要請項目】
一、生活保護基準引き下げはやめて下さい。
一、医療扶助への一部負担導入はしないで下さい。
一、生活保護受給者の医療をうける権利や医師の裁量権を侵害する生活保護指定医療機関に対する「調査・指導権限の強化」「指定要件等の見直し」(「生活支援戦略」の素案)はしないで下さい。

以上

協会のとりくみ

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