奈良県保険医協会

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消費税:改めて増税に断固反対、医療にはゼロ税率を

 「社会保障と税一体改革」の自公民の3党合意のもと、消費税増税法が昨年に成立、来年2014年4月に税率を8%に、翌15年10月に10%に引き上げる内容だが、景気動向を考慮し実施の最終判断を内閣が行うと定めている。安倍晋三首相は10月はじめにもその判断を行うという。
 私たちは、繰り返し訴えてきたように、消費税の増税には断固反対である。
 消費税は庶民に重く富裕層に軽い、不公平な税制であり、特に大企業の税負担を軽減することにつながっている。仕入税額控除の仕組みが巨額の輸出戻し税を生み、派遣社員等の雇用破壊を助長する。社会保障財源として期待する向きもあるが、低所得者ほど負担が重くなる消費税はそもそも社会保障財源にふさわしくない。それに消費税増税を決めた3党合意は国民の信任を経ているとは言いがたい。
 景気回復の実感もないなか、多くの国民の給与は上がらぬまま、デフレ脱却を叫び食品など生活資材の値上げを招く高物価誘導の政策のもと、増税は消費を冷え込ませてさらに経済状態を悪化させる。
 景気回復の兆しが見られるのは一部の大企業のみで、大部分の中小企業に実感はない。生活保護世帯や年金生活者に至っては年々厳しさを増すばかりで増税は生活を直撃する。与党では低所得者対策は8%への引き上げ時は見送り10%の時に考慮するとも論じられるが、ならば8%は当然の水準で生活必需品も最低8%を課すとの意図か。
 消費税増税は結局、大企業のみを潤し、国民生活を更なる困窮に導くもの。増税分を社会保障にあてるとは国民を欺く甘言である。
 医療では保険診療が「非課税」であるため、いわゆる「損税」が生じて、医療機関が多額の負担を強いられる構造になっている。診療所でも年間数十万から100万以上にもなり、病院では数千万円にも及ぶ不合理な消費税負担が、10%になれば倍増することとなり、経営破綻の危惧も現実味を帯びる。保険医療機関にとって、増税見送りでもゼロ税率課税による問題解決が求められる。
 財政再建も大切な課題だが、消費税増税や社会保障削減など国民生活の犠牲でなされるべきではない。本来負担する能力もある大企業や富裕層を優遇している税制や諸施策を見直すべきだ。
 財政再建には経済成長が重要だが、それに寄与するのは、大企業のための儲け主義の「成長戦略」ではなく、高齢化社会における社会保障部門を担う分野の公的投資であり雇用確保ではないか。庶民が安心して暮らせる社会をつくることを通じて経済成長を促し、所得税や保険料収入の増となることが期待される。

【奈良保険医新聞第374号(2013年9月10日発行)より】

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