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死亡してからも障害年金は請求できる

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

死亡してからも障害年金は請求できる
【2015年8月】


 私の診療所に勤務していた職員が退職直後に大腸がんで死亡しました。この場合、遺族年金は受けられますか。


 遺族はどなたですか


 奥さんとまだ小学校の娘さんです。


 先生のところは厚生年金の適用事業所ですか。


 うちは医療法人ですから当然厚生年金に加入しています。


 亡くなった職員の方はどのくらい厚生年金に加入していましたか。


 うちに勤めて10年になりますから、前職と合わせると10年以上でしょう。


 大腸がんにはいつごろなったのですか。


 3年前です。2年前から人工肛門をつけ闘病生活を送っていましたが、1年前に退職し、先月大腸がんで亡くなりました。


 退職後の死亡であっても保険料の納付要件を満たし、在職中に初診日があり、初診から5年以内に死亡した時は遺族年金が受けられます。この方の場合、娘さんがまだ18歳未満ですから遺族基礎年金と遺族厚生年金が受けられます。遺族厚生年金は通常、在職中に死亡か老齢厚生年金を受給できるだけの加入期間があるときなどですが、このように退職後でも遺族厚生年金を受け取れるときがあります。ところでその方は障害厚生年金を受けていましたか。


 少なくとも在職中は受けていませんでした。がんで障害年金など受けられるのですか。


 どんな病気でも重ければ障害年金を受けることができます。この方の場合2年前から人工肛門をつけていたのですから少なくとも2年前から2級か3級の障害厚生年金、 2級であればさらに障害基礎年金も受けられました。


 でも死亡した場合はどうなのですか。


 死亡してからでも請求できます。未支給分の障害年金を2年遡って請求できます。


 誰が請求するのですか。


 未支給分を生計維持関係にあった配偶者が受け取ることになります。


 人工肛門で障害年金が受けられるということを知らない人も多いのではないですか。


 そうです。意外と障害年金のもらい忘れが多いのは心臓ペースメーカー装着、人工透析などです。最近ではメンタルの病気も増えていますが精神疾患の病気も障害年金請求漏れが多いです。


 そういえば私の友人も長い間糖尿病と腎臓を患い、最近人工透析を開始しましたが、障害年金を受け取れますか。


 その方のお年はいくつですか。


 66歳です。


 障害年金の請求では保険料の納付要件と障害認定日がポイントです。障害認定日とは障害を認定する日ですが通常初診日から1年半たったときです。心臓ペースメーカーなどは装着の日が障害認定日です。障害認定日に悪くなくてもその後悪くなった時はその悪くなった日から障害年金を請求できます。これを「事後重症」と言います。事後重症による請求は65歳を過ぎると請求できません。

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