奈良県保険医協会

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新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックをどう見るか

世界の対応
 COVID-19感染が明らかになってから迅速な対応策を打ち出した国は台湾と韓国であった。感染の有無を確かめる検査を拡充し、感染者数の正確な把握ならびに重病者の治療施設の確保に努めた結果、現在は安定した状態である(死亡者数:台湾7名、韓国263名、日本786名、5月22日時点)。
 一方、当初様子をみていた、ヨーロッパ各国ならびにアメリカ等は未だに終息には程遠いレベルである(死亡者数:イタリア3万2169名、アメリカ9万2235名)。初期に大量の死亡者が出たイタリアでは、それ以前に社会保障の医療費を削減していた結果、病院、医師の数を20%削減し、老人ホームで大量発生した重病者を受け入れできなかった。アメリカは経済第一の方針を取ったので疾病予防管理センター(CDC)がうまく機能せず結果的に現在世界一の感染者数と死亡者を出した。

日本の対応
 日本の対応は不十分であった。それは台湾が2003年にSARS(84名死亡)ならびに韓国が2015年MERS(38名死亡)による被害を受けた経験があり対策を講じていたのに対して、日本はいずれの感染者も発生せず旧態依然とした感染者囲い込みを基本方針としていたからである。対策と言えるとすれば、日本の某製薬会社が中国と研究協力して新型インフルエンザのパンデミックに対応する薬(アビガン)を開発して薬200万人分を備蓄していたことであろう。
 しかし現実は、本年7月から開催を予定していた東京オリンピックへの影響を考慮して、できるだけ日本国内の認知された感染者数を減らすため恣意的にPXR検査を制限していた様にも見える。その一方で有名人の短期間での感染による死亡が報道され、感染者が増えると説明不十分のまま緊急事態宣言を発動し、一般の社会活動に制限をかけたが、マスクの配布、休業補償の整備は遅れた。一方、医療界は継続して診療報酬を削られ、入院ベッドを減らせという圧力(地域医療構想)に抵抗しながら医師数の少ない状況で過重な時間外労働を課せられても耐え忍んで現在に至っている。

これからの課題
 数字のみ見れば世界の中で感染、死亡者が少ない成功した国と思われているが、それは政策が後手後手に回ったに拘わらず一般国民の感染症に対する意識レベルが高く、国民皆保険制度の医療システムが耐えたからであろう。これから医療現場に望まれるものは、迅速なPCR検査と治療薬・ワクチンの開発であろう。

【奈良保険医新聞第453号(2020年6月15日発行)より】

主張

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