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新型コロナの感染を恐れ出勤しないスタッフへの対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

新型コロナの感染を恐れ出勤しないスタッフへの対応
【2020年7月】


 スタッフ10人のクリニックです。スタッフの一人が友人などからコロナウイルスに関連してバイキン扱いされるなど、ひどい誹謗中傷を受けて出勤してきません。この場合、給料を支払う必要はあるのでしょうか。


 経営者の立場からすれば労働者を働かせる権利があり、労働者には働く義務があります。従って労働者の都合で働かないのですから、就業規則で特別な規定があればともかく、ノーワーク・ノーペイの原則で給料を支払う必要はありません。


 誹謗中傷が原因の精神疾患がある場合はどうなりますか。


 業務災害にはならないと思います。健康保険の適用者であれば、傷病手当金を請求できます。


 精神疾患でないときはどうなりますか。


 働ける健康状態であれば就労を求めることができます。ただ、労働契約法で経営者には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」ことが求められています。従って必要な安全対策は取らなければなりません。


 われわれ医療従事者が万が一コロナウイルスに感染した場合、労災認定されるのでしょうか。


 先生は労働基準法上の労働者ではないので、労災補償を受けることができませんが、スタッフは労災補償を受けることができます。特に医療従事者については「新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災給付の対象となる」(厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」より)となっています。


 「先ほどの欠勤しているスタッフは週2日のパート職員で、私からすれば院外で新型コロナにかかる可能性の方が高いと思います。このような場合でも労災申請しなければいけませんか。


 法律上、労災申請者は経営者ではなく労働者です。


 でも労災申請のときは事業主のハンコを押していますよ。


 事業主の証明がなくても労災申請はできます。労働基準監督署が問い合わせしてきても証明できない理由を説明するなり、書面で示せばいいのです。
 しかし、私としては今後の労使関係のためにも、業務中に感染した可能性があるときは、なるべくスタッフの労災申請には協力した方がいいと思います。業務災害かどうかを決めるのは、あくまでも労基署です。労災認定されれば治療費は無料になりますし、休業補償もあります。


 慰謝料などの損害賠償を請求されることはありませんか。


 過労死やいじめ、パワハラによる精神疾患でもない限り、めったにありませんが可能性はあります。そのため、民間の損害保険に加入している事業者もいます。私としては、誠実に対応することで損害賠償請求のリスクを軽減することができると思います。医療従事者の新型コロナによる労災請求件数は5月27日時点で37件、うち認定されたのはわずか2件です。


 意外と少ないですね。


 そうですが、働く者からすれば速やかな災認定が望ましいのではないかと思います。

雇用問題Q&A

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