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扶養親族の税務

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2007年9月】扶養親族の税務

 配偶者親族特別控除が廃止され、政府は今後更に扶養控除等の縮減を企図しています。扶養控除の意義を今一度見直すとともに、その扶養親族にかかる節税方法を解説します。

憲法と扶養控除

 所得税は、1年間の事業所得や給与所得など様々な所得に対して、一部の所得を除き総合的に課税を行います。他方憲法は最低生活費非課税の原則を定めており、扶養控除や配偶者控除等はその憲法上の要請から制定されたものです。日本の課税最低限は高いという政府の統計には誤りが多く、特に納税者本人の生活費に相当する基礎控除額38万円は、他の欧米諸国の100万円程度に比較して著しく低くなっています。今後、課税最低限の拡充こそが必要であると考えます。

扶養控除の基礎

 扶養控除の金額は、一見複雑に見えますが、意外に単純です。別表のように基本となる38万円が、16歳から22歳の特定扶養の場合は25万円加算され63万円、70歳以上の老人の場合10万加算され48万円となります。更に同居の障害者である場合には35万円が、同居の老親の場合には10万円が加算されることになっています。

生計を一にするとは

 これらの扶養控除等は、すべて納税者と生計を一にする親族である場合に適用される事になっています。生計を一にするとは、必ずしも同居である必要はなく、単身赴任など一時的に非同居状態の親族は問題なく生計一とされます。

 また、たとえ同居していなくとも日常的に生活費の一定以上の部分を経済的に援助しているなどの状態にある場合には、生計一状態であるとされます。

老親の同居、同居障害者

 同居老親と障害者の場合には控除額の積増しがあります。この場合の同居は同一の家屋に起居すると言う意味です。老親は納税者の配偶者の親でも良く、また配偶者と同居している場合でも控除が可能です。

 障害者の場合には更に対象が広がり納税者の扶養親族である誰かと同居していれば同居障害者とされます。

扶養親族の帰属の変更

 誰をどの納税者の扶養親族とするかは確定申告時点までに判断する事が可能です。従って、夫の所得が予定より少なくなった等の場合には、夫の扶養親族とする予定であった夫の母について、既に年末調整を済ませ夫の母を扶養親族としていなかった妻の給与所得の計算上、遡って夫の母を扶養親族と変更する事も可能です。

別表

扶養控除一覧表
年齢 誕生日 基本控除額 同居老親 同居特別
障害者
同居老親かつ
同居特別障害者
10万円加算 35万円加算 45万円加算
16歳~22歳 昭和60年1月2日
~平成4年1月1日
63万円 98万円
70歳以上 昭和13年
1月1日以前
48万円 58万円 83万円 93万円
上記以外 38万円 73万円

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