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幸せを遺す知恵の“話(ワ)”③

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2016年3月】幸せを遺す知恵の“話(ワ)”③

完璧な相続税対策と心を動かす相続税対策は、違う

 いよいよシリーズ最終回となりました。まず、法人化を正しく理解して活用していくことが、着実に財産を遺せる第一歩となります。法人化の形態はいろいろありますが、内容は問いません。重要な事は法人が不動産(土地・建物)を所有することです。例えば、個人医療経営者はどのように法人を設立するのか。まずは、医療事業を行っている個人所有の土地・建物の内、建物部分を法人に売却します。法人は建物を所有することで、先生(個人)から賃料を得る事が可能になります。この法人に入る賃料が法人化のミソになるわけです。ポイントを5つに分けて整理します。

①個人の所得分散による超過累進税率の緩和を図る
 個人医療経営の事業所得が高額になれば、所得税の累進税率のランクが上がります。現在の超過累進税率は5%~45%にランクに区分されています。この事業所得を構成する所得を賃料という経費で法人に支払うことで、税率のランクを下げる効果につながります。
②個人と法人の税率格差に着目
 今後、個人所得税・相続税は増税されることはあっても、減税される可能性は低いと考えます。一方、法人税率は国際競争力の観点より減税傾向になります。同じ払う税金であれば、税率の低い法人で払う方がお得では!?
③役員給与支給による所得分散による効果
 法人に蓄積された収益は役員(親族)へ役員報酬という形で支給します。所得の分散は一種の贈与と同じ効果として相続税と所得税の節税につながります。
④役員給与に対する給与所得控除の適用
 法人による財産の間接所有は、同じ1度の収益に対して2回の経費(役員給与と給与所得控除)を実質的に計上することが可能になります。
⑤事業承継に係る手続きの簡略化
 個人医療事業は、次への事業承継として最低限必要な事業用財産を法人で所有します。事業承継は株式を次の後継者へ贈与することで完結します。いつでも、どこでも好きなタイミングで株式を贈与することで、相続に対する柔軟な対応が可能になります。
 基本的な仕組みを間違えなければ、法人化の魅力は幅広く広がります。最後に必要なことは何か。そうです、皆様の気持ちをこの法人に注入してください。節税ありきの完璧な相続税対策は長期的なスパンで見れば綻びがでます。皆様の次への想いを、医療経営に対する気持ちを決めたうえで、法人化の検討をお勧めします。

経営に役立てる医院の会計と税務

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