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年金受給中の看護師に給料を支払うと年金は減らされるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

年金受給中の看護師に給料を支払うと年金は減らされるか
【2011年4月】


 私の診療所は定年を65歳にしていますが、今年65歳になる看護師に引き続き働いてもらいたいと思っています。ところが本人は「働くと年金を受け取れなくなるので」と言ってためらっています。本当ですか。

A
 64歳までは年金の停止調整額が28万円でした。つまり年金額と給料の合計が28万円を超えると超えた額の半分が年金から減らされていました。したがって年収がかなり多いと年金は支給されません。


 65歳からはどうですか。

A
 65歳から年金の支給停止額の基準が大幅に変わります。64歳までの老齢厚生年金は報酬比例部分と定額部分とからなっています。簡単に言いますと65歳からはこの定額部分が老齢基礎年金になり、報酬比例部分が老齢厚生年金となります。65歳からは老齢基礎年金は収入がどれだけあっても請求すれば全額支給されます。


 老齢厚生年金はどうなるのですか。

A
 老齢厚生年金は調整されますが、64歳までと比べると老齢厚生年金額は大幅に少なくなります。それに老齢厚生年金の支給停止額の基準が47万円になります。


 すると、どのくらいの収入であれば年金を減らされないですむでしょうか。

A
 65歳からの老齢厚生年金額と年収の月平均の合計が47万円までは年金を減らされません。その方は40歳まで専業主婦ということであれば厚生年金の期間が短いので、老齢厚生年金の額は月額7万円程度だとすると、賞与も含めた月の平均収入が40万円までは年金は減額されません。


 分かりました。本人と話しあって引き続き年金のことは心配しないで働いてもらうことにします。

A
 ところで先生のところは他にも60歳以上の方はいらっしゃいますか。


 はい、一人います。

A
 それであれば、定年延長の助成金も検討してみてください。


 どのような助成金ですか。

A
 定年を70歳にするまたは定年の定めの廃止、あるいは希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入などを行うと、助成金が支給されるというものです。


 助成金の額はいくらぐらいになりますか。

A
 従業員の人数によって違いますが、20万円から160万円です。現在制度の改定が検討されていますので具体的には各都道府県にある「高齢・障害者雇用支援機構」の出先機関にお問い合わせください。助成金額が減る傾向にありますので早めに相談してください。


 60歳以上のパートも対象になりますか。

A
 雇用保険に加入していればいいのです。人生70歳現役時代とも言われています。高齢者に大いに働いてもらって成果を上げている企業はたくさんあります。創造性とは体験を基礎に発揮されるものといわれています。その意味で「体験豊かな意欲のあるお年寄りが一番怖い」とも言われています。これを機会に高齢者の活用を検討してみてください。

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