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小規模企業共済制度の改正

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2010年6月】小規模企業共済制度の改正

 平成22年度税制等改正では、個人事業主の退職金制度である小規模企業共済制度と従業員に支給する退職金制度である中小企業退職金共済制度について見直しが実施されました。今回は、小規模企業共済制度を解説しながら今後の対応について考えます。

小規模企業共済制度

 医業を含む個人事業主が掛け金を積み立て、年齢65歳に達した時点や廃業時点で共済金を受取る制度です。国が小規模企業共済法を制定し、運営を独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」が行っています。月額の掛金は1000円から70,000円まで自由に設定でき、全額事業主が負担します。

現在の税制の特例は

 掛け金が全額所得から控除され税制の優遇を受けながら積立できるため所得が高い人ほど節税につながります。

 また、受け取った共済金は原則として退職所得として課税され、退職所得控除(加入期間20年までは年額40万円、それ以降は年額70万円)の適用を受けられるほか、現行では退職所得控除後の二分の一にのみ課税される半額課税があり、加入時点と受取時点の両方で税制特例が適用されます。

配偶者や子の加入も

 従来事業主個人の加入のみで、専従者である配偶者や子の加入は認められていませんでした。今年度改正により、これらの配偶者や子も加入できるように改正されましたが、法律の整備に時間を要するため加入できる時期や対象者の条件などが一年以内に公表される見込みです。

今後の制度の運用に注意

 このように大変有利な税制上の特例を受ける制度ですが、その制度の運用は順風満帆とは言えないようです。機構が公表している財務状況では、平成21年3月時点で9900億円の欠損金となっています。機構はこれらの欠損金は従来の高額利率を保証していた時代のものであり、既に予定利率は1%に引下げられ今後欠損解消の計画があると明言しています。小規模企業共済制度だけでなく、旧来の様々な制度の将来性が問題視される時代となっています。依然とし大きい節税メリットと将来の運用リスクの両方を考えながら賢明な対応が必要とされます。

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