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専従者給与の活用と注意点

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2005年3月】 専従者給与の活用と注意点

 専従者給与は活用次第では、可処分所得の大きな増加となりますが、注意点も多い制度です。専従者給与の合理的活用法を説明します。

青色申告者特有の制度

 専従者とは、青色申告者である医師と生計を一にする親族に支払った給与で労務の対価として相当なものです。白色申告者にも専従者控除という制度がありますが、50万円(配偶者は86万円)ですから活用には限度があります。

 親族に支払った給与などは、原則として医師の所得の計算上必要経費とはなりませんが、「青色専従者給与に関する届出書」を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2ヶ月以内)に提出することにより、必要経費とする事が可能です。

未払いは経費とならない

 この専従者給与は、従業員に対する給与と異なり、支払いが無い場合には必要経費とはなりません。この点が要注意です。また、従業員の給与と同様支払い事実を証明できるよう専従者の通帳に入金するなどして後日のトラブルを避ける事が賢明です。更に、年払いや不定期払い等は原則として否認されますから、従業員と同様な支払い時期を守りましょう。

 また、「専従」を要件としますから、専従者が他に給与等の所得を有している場合には適用されませんからこの点も要注意です。原則として6ヵ月を超える従事が必要です。

労務の対価として相当であるとは

 では、専従者給与の額はいくらまでが妥当でしょうか?

 税法では、(1)従事期間、労務の性質、(2)他の使用人給与との比較考量、(3)事業の種類や規模、収益状況を勘案する事を要求しています。

 実際には、概ね年間2百万から5百万程度の金額に集中しています。例外的に看護師や歯科衛生士等の資格を有するなどの場合には、これ以上の実例が存在します。

 従業員より相当多額の給与となる場合には、従事の内容や程度、資格等、院長代行としての総務、管理等の必要性等について具体的に説明できるようにする事です。

専従者給与の効果
(1) 所得税の節税効果
経費となる事により、院長の医業所得に適用される高い率の税率分だけ税額が減少しますが、専従者には院長より低い税率が適用されますのでその差額が節税となります。
(2) 相続対策
院長の資金が合法的に専従者に移転しますから、院長の相続対策となります。

 尚、専従者が他の所得を有している場合等で所得税法上専従者給与を必要経費と出来ない場合であっても、専従者給与の支払いは「贈与」とはならず贈与税は課税されません。

 従って、今日では、ペイオフ対策としての活用にも注目されています。

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