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宿直の労働時間はどうなる

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

宿直の労働時間はどうなる
【2008年4月】


 退職した職員が、サービス残業をさせられたのに残業代を受け取っていないとして、労働基準監督署へ訴えました。

A
 サービス残業はあったのですか。


 いえ、週に1回の宿直を労働時間ということで、その時間が残業になるのに残業代を受け取っていないというのです。

A
 宿直のときは労働しているのですか。


 私のところは、在宅医療を中心に行っています。患者さんからの急用があったとき契約している医師に連絡するため宿直します。仕事といっても、宿直のたびに電話を1回か2回受ける程度です。

A
 宿日直勤務は、ほとんど労働をする必要のない状態の勤務です。通常の労働の継続は対象となりません。従って、火災や盗難予防のための定時巡視、緊急の電話の応対、非常事態に備えての待機に限られます。
 医師、看護師の宿直勤務については、病室の定時巡回、異常患者の医師への報告、少数の要注意患者の定時検温など、特殊な措置を必要としない軽度・短時間業務が加えられます。宿直手当は払っていなかったのですか。


 宿直手当として5,000円支払っていました。しかし、残業していたのだからと残業代の支払いを要求しています。残業代は5,000円ではとても収まらないと主張しています。

◆許可なしの宿日直は通常の労働時間扱い

A
 お話では確かに宿直といえそうです。ところで、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」を労働基準監督署へ提出し、労働基準監督署の許可を得ていますか。


 なんですか、その「許可申請書」は。

A
 労働基準法施行規則23条に基づく手続きで、宿直または日直の勤務で労働基準法41条に定める断続的な業務について、労働基準監督署の許可を受ければ、労働基準法上の労働時間・休憩時間の制限を受けないというものです。


 そのような手続きはしていません。私の友人の医療機関でもしていません。

A
 この手続きをしておかないと、通常の労働時間とみなされ普通に計算して残業手当を支払わなければなりません。


 そんなことをしたら、ただでさえ経営が大変なのにとんでもないことになります。

A
 ですから、この手続きをして宿直と認めてもらわなければなりません。


 遡ってはできないのですか。

A
 遡ることは通常はできません。従って、なるべく早く申請した方がいいでしょう。


 申請はどのようにするのですか。

◆手続きは最寄りの労働基準監督署で

A
 事業所を管轄する労働基準監督署に「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」を提出します。この申請書だけでは具体的に説明できない場合がありますので、病院・社会施設用の「断続的宿日直勤務許可申請添付書類」を提出する必要があります。この書類は労働基準監督署にあります。


 書類を提出すれば宿直になるのですか。

A
 申請に対する許可・不許可は、基本的には申請者が提出した書面の内容をもとにして行われます。しかし、担当官が書類だけでは十分な心証を得ることができない場合は実地調査を行うことがあります。


 宿・日直は1カ月どのくらいさせることができますか。

A
 いくら軽い業務といっても昼間は通常の業務を行っているわけですから、あまりに回数が多いことは健康上も好ましくありません。許可基準は、原則として「宿日直勤務は週1回、日直勤務は月1回」となっています。


 宿直手当は通常いくらくらいですか。

A
 基準賃金の3分の1をくだらない額とされています。

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