奈良県保険医協会

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原爆の〝黒い雨〟の謎を追って― 長崎の本田医師を招き、市民公開講座開催しました。

 奈良県保険医協会と奈良反核医師の会は10月28日に市民公開講座「原爆の〝黒い雨〟の謎を追って-低線量被ばくの人体影響」を開催しました。講師は長崎県保険医協会会長・全国保険医団体連合会理事の本田孝也氏でした。当日は、小雨がちらつく中でしたが会員・市民ら約30人が参加し、熱心に耳を傾けました。
 本田氏は、長崎で原子爆弾が投下された直後に「黒い雨」が降ったであろうとさまざまなデータから推測される西山地区と間の瀬地区に注目し、特に自身の診療所から比較的近く通院患者が数名居た間の瀬地区で聞き取り調査を行いました。間の瀬地区は爆心地から約7.5キロ離れた被ばく未指定地域であったため被ばく者認定がされませんでしたが、多くの方が脱毛など原爆症と同様の症状に苦しみ、亡くなられているとのことです。
 本田氏は原爆の黒い雨と内部被ばくについて調査文献を探すうちに、ABCC(原爆障害調査委員会、現在の放射線影響研究所)とオークリッジ国立研究所の職員が作成したレポートをインターネットで偶然見つけました。黒い雨についての詳細な記載があり名前をたどっていくうちにこれらの調査に関わりのあった元ABCCの職員に会うことができたなどの偶然が重なり、レポートの原本を見ることができました。本田氏が放射線影響研究所と再三やり取りした結果、そのレポートの集計方法自体に誤りがあること、黒い雨の調査についての分析はされていないことなどがわかりました。しかし、被ばく者に行われた基本調査、通称MSQに「原爆直後黒い雨に逢いましたか?」という項目があり今回のレポートの元となるデータが13,000人分存在することが後ほどの記者会見などで明らかになりました。放射線影響研究所はこのデータを再度分析し年内に結果を公表する予定とのことです。
 歴史的にも原爆の内部被ばくや黒い雨の影響を認めようとしない日本政府の姿勢は一貫しており、福島原発事故においても政府の対応は同様です。当日は質疑応答の時間は取れませんでしたが、参加者の感想は「低線量被ばく、内部被ばくの影響をち密にデータ収集、検討され、また現在の住民からの聞き取りも加えられた結果のお話は説得力のあるものでした」など好評でした。


本田孝也氏の講演資料:
スライド(Powerpointファイル、約56MB)

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