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労働局からあっせんの通知。参加すべきか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

労働局からあっせんの通知。参加すべきか
【2013年11月】


 労働局の紛争調整委員会から「あっせん開始」の通知が来ました。退職した職員がいじめ・パワハラを受け、そのうえ解雇されたというものです。あっせんには必ず応じなければならないのでしょうか。

A
 あっせん制度は近年激増している労使トラブルに対し、個別紛争解決を促進する法律ができました。それに基づく制度で、「応じる、応じない」は全く自由です。


 応じないと不利になることはあるのですか。

A
 裁判に発展したり、1人でも加入できる合同労組「ユニオン」から団体交渉を申し込まれたりする事例もあります。この「あっせん」は白黒つけるところではなく双方の妥協点を見つけるところです。


 私の診療所では当人があまりにも仕事が遅いので、多少声を荒げたことはありましたが、いじめもありませんし、解雇したこともありません。「辞めたらどうか」と言ったところ、本人が辞めるというので「仕方がないね」と言って円満に退職していったものと思っています。従ってあっせんを受けるつもりはありません。

A
 その時「退職届」はもらいましたか。


 当人が辞めると言うので了解しました。書面で「退職届」などもらっていません。

A
 そうなると解雇なのか、自己都合の退職なのか、勧奨による退職なのかをめぐってトラブルになります。雇用保険の離職票の退職理由はどうなっていましたか。


 「自己都合退職」です。

A
 書面で退職届をもらわなかったのはトラブルをこじらせることになります。また多少でも金銭解決も考えておられるならば「あっせん」に応じたらいかがですか。


 解決金が相当高くつくのではないですか。またあっせんの費用はかかるのですか。

A
 一般的なあっせんの場合は、裁判費用の価格よりも、けた違いに低額で解決しています。また費用は無料です。


 具体的にはどのような方法になるのですか。

A
 弁護士や学識経験者など第三者が中に入り、双方の主張を聞いて妥協点を見つけます。この間、当事者同士は別々の部屋に案内され、当事者同士が会うことはありません。


 ひとりで行くのですか。

A
 社会保険労務士などが立ち会うこともできます。都道府県によっては事前に届けないと社会保険労務士などの同行を認めないところもありますから事前に確認してください。


 時間はどのくらいかかりますか。

A
 第三者の弁護士などが双方の間を行ったり来たりするので時間はかかります。2時間程度が多いようです。


 あまりにも不当な要求の場合にはどう対処すれば良いのでしょうか。

A
 その場合は「あっせん不調」ということになります。全体でも3割程度が不調になっています。逆に7割程度が成立しているわけですから、かなりの確率で解決していると言えます。


 紛争調整委員会の弁護士などは労働者の味方の人が多いのではないですか。

A
 いえ、そんなことはありません。労使トラブルをかなり手がけている弁護士ですから、相場を踏まえ、適当な妥協点を提案してくれます。辞めさせられた労働者から月給10カ月分の解決金が要求されたとき「解雇予告手当プラス1カ月分なら」と答えたところ、それで和解したこともあります。このあっせんは裁判と違い、法的根拠のある解決を目指すのではなく、双方が不満ながらも妥協点を見つけることです。

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