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労働基準監督署調査及び労働基準監督署の是正勧告への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

労働基準監督署調査及び労働基準監督署の是正勧告への対応
【2006年2月】


労働基準監督署から賃金台帳・出勤簿・労働者名簿・就業規則を持ってくるようにという連絡が文書でありました。労働基準監督署に行かなければならないのでしょうか。


労働基準監督官は労働基準法に基づいて臨検、帳簿及び書類の提出を求めたり、使用者や労働者に対し尋問を行うことができるとされています。


20年以上歯科医院を経営していますが初めてのことです。労働基準監督署の調査に応じなければ何か罰則があるのでしょうか。


調査に応じなかっただけで罰金とはひどいと思うかもしれませんが、一応30万円以下の罰金となっています。罰金刑は逮捕もあり得ます。労働基準法でも労働基準監督官は「この法律違反の罪について、刑事訴訟に規定する司法警察官の職務を行う」とされています。


労働基準監督官が実際に逮捕することなどあるのですか。


私の知っている監督官で逮捕の経験がある人はいませんが、労働基準法違反で別件逮捕されたことを聞いたことがあります。


この労働基準監督署の指定する日は診療の日なので、休診日の木曜日に変えてもらうことはできますか。


それはできます。労働基準監督官に電話して調整すればいいと思います。労働基準監督署の調査には定期監査と労働者の申告に基づくものがありますが、先生のほうで何か思い当たることはありませんか。


そういえば1カ月ほど前ミスの多い職員と話し合って辞めてもらったことがあります。そのとき「退職金はないのですか」と聞くので昔から退職金は支払ったことがないといっておきました。それで了解したと思いますが。


確かに退職金は必ず定めておかなければならないというものではありません。退職金の定めがあるのに退職金を支払わないのは労働基準法違反ですが、退職金の定めのないところは支払う必要はありません。残業手当などはキチンと支払っていましたか。


この職員はミスが多く、そのミスの手直しで遅くまで仕事をしただけで、通常の職員であれば残業の問題の起こらないことでしたので残業手当は支払いませんでした。


それが労働者の告発の原因のようですね。


それではミスが多く余計な時間をかける職員のほうが賃金が増えてしまうではないですか。新幹線だって速いから料金も高いのでしょ。鈍行列車のほうが高い料金で良いんですか。


おっしゃることは分かりますが、残業の未払い賃金があれば支払うことになります。


しかしこんなことは今まで聞いたこともありません。


大企業では昭和の時代はサービス残業は日常的に行われ、平成になってからでも当時の森首相などはサービス残業を肯定した答弁をしていました。言い過ぎかもしれませんが、労働基準法は守らなくて良い法律から守らなければならない法律になりました。だからこそ最近になって天下のトヨタ自動車を始め大手電力会社、武富士など数え切れないほどサービス残業が告発されたのです。


そうすると遡って残業賃金を支払わなければいけないのでしょうか。どのくらい遡って支払うことになりますか。


法律上は2年間遡って支払うことになっています。しかし、労働基準監督署は「取り立て機関」ではありません。労働基準行政が適正に行われるかどうかを監督するところです。これを機会に監督官とよく相談するといいと思います。


告発・告訴される可能性は?


是正勧告に従わないなどかなりひどい対応をするとその可能性もあるでしょうが、今回はそんなことはないでしょう。

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