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労働基準監督署の調査への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

労働基準監督署の調査への対応
【2012年1月】


 労働基準監督官から「労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、労働契約書などを持ってくるように」という文書が来ました。なぜ私のところへこのような文書が来たのでしょう。

A
 労働基準監督署は業種を定めて定期的に監督することもあれば、労働者が監督署へ申告したことに基づき監督することがあります。


 どうしても行かなければならないのでしょうか。

A
 労働基準法で労働基準監督署は「使用者または労働者に対し、必要な事項を報告させ、または出頭を命ずることができる」となっています。


 税務署ならよく来ますが、労働基準監督官にそんな権限があるのですか。

A
 同法で、労働基準監督官は「司法警察官の職務を行う」、事業場などに「臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、または使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」となっています。労働基準監督署の「署」は保健所の「所」と違い、税務署、警察署の「署」です。冗談で「“横目でにらむ者”と書く」といわれますが、この「署」の役所は送検ができます。


 今回は、どのように対応すればいいでしょうか。

A
 事実をありのままに報告し、是正すべきものは是正するという態度で臨むべきと思います。ある事業所は虚偽の報告をしたことが判明し、初めは直近の3カ月分の帳簿の調査であったのが2年分遡って調査され、その間の不払い残業代を支払うよう是正勧告されました。むしろ労務管理を見直す、いい機会と思った方がいいでしょう。


 調査はどのように行われるのでしょうか。

A
 私が立ち会った調査では、一般的には労働者の人数を聞きます。10人以上であれば就業規則を確認します。


 短時間のパートもその人数に含まれるのでしょうか。

A
 当然含まれます。次に出勤簿の確認です。時間外労働があるかどうか、あれば時間外協定を労働基準監督署へ提出しているかどうかを確認します。


 当院は10人未満なので時間外協定を届けていません。時間外労働させても職員は何の不満も言ってきませんが、それでも必要ですか。

A
 人数に関係なく、時間外労働させることが見込まれるときは提出しなくてはなりません。また、時間外手当の計算方法についても聞かれます。基本給を所定労働時間で割って時間単価を計算しています。労働基準法で割増賃金の計算で参入すべき賃金は決まっています。家族手当、通勤手当とその他一定の手当以外はすべて参入しなければなりません。


 そうするとかなり遡って残業手当を支払うように言われますか。

A
 賃金の時効は2年ですが、労働基準監督署は取り立て機関ではありません。労働基準行政を適正に行わせる機関です。是正勧告では3カ月遡ることが多いようです。

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