奈良県保険医協会

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切り捨て先行型の予算は許せない―2013年度概算要求について

 政府の2013年度概算要求基準が8月17日に閣議決定され、現在各省庁で検討中である。
 今回は7月末に閣議決定された「日本再生戦略」にのっとり「グリーン(エネルギー・環境)」「ライフ(健康)」「農林漁業」に係るものを「特別重点要求」として、予備的な予算の上乗せが認められており、9月初旬の報道によると、厚生労働省は特別重点要求枠に1088億円、全体としては30兆266億円の要求額となっている。安住財務相は「バッサリ切る仕事が増えた」と言うように、年末に向け財務省との攻防が予想される。
 社会保障分野については、年金・医療等に係る経費については、高齢化にともなう自然増(約8400億円)を加算することは認めているが、聖域を設けず、合理化・効率化にとりくむとしている。今国会での決定は見送られたが、社会保障・税一体改革により70歳から74歳の高齢者の医療費負担についても引き続き検討対象に上がっており、余談を許さない。
 2009年の政権交代により、小泉構造改革時代の自然増分の削減はなくなったが、政府の医療費削減の姿勢は変わっていない。各省庁で横割り行政を廃止し弾力に富んだ予算を組むことになっている。それがどの程度まで反映されるのか。医療・年金の自然増分は削減しないとはされているものの、生活保護の見直しやその他で全体として社会保障抑制路線は変わらない。特に生活保護については、タレントの親族の生活保護受給に関する過剰報道により風当たりが強まっている。大阪市では生活保護の適正化と医療機関の登録制を先行してすすめようとしている。ナショナルミニマムである生活保護の切り捨ては社会保障制度の根幹にも関わってくる問題である。
 毎年増加していく社会保障費に当てるためという名目で消費税増税を含む社会保障・税一体改革法案を強行採決したが、自民党の提案により同時に「社会保障制度改革推進法」「国家強靱化法」も成立し、消費税増税で社会保障を充実するどころか、公共事業のバラマキに当てるということが明らかになっている。
 「地域医療強化のための緊急対策」ではドクターヘリ運行体制の拡充なども予算に盛り込まれたようだが、在宅医療の連携体制、認知症ケアパスなど、病院・施設ではなく在宅でという流れで入院患者を減らし在宅で看取らせたいという流れに変わりはない。まずは削減ありきの予算ではなく、政権交代時にマニフェストにあったOECD並みの医師数、救急、産科、小児等の医療提供体制の充実や国民が安心して医療を受けられ社会保障を享受できる予算となることを望む。

【奈良保険医新聞第362号(2012年9月10日発行)より】


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