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介護離職対策と2025年問題

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

介護離職対策と2025年問題
【2016年6月】


 職員が介護休業をしたいと言ってきました。当院はぎりぎりの人員でやっていて余裕がありませんが、介護休業させなければいけないのでしょうか。


 基本的には事業主は介護休業の申し出を拒むことはできませんが、介護・育児休業等に関する労使協定を結んでいれば、雇い入れて1年未満の人に関しては介護・育児休業の申し入れを拒否できます。


 そのような協定は結んでいないので、休業してもらうしかないですね。その間の給与はどうすればいいですか。


 雇用保険の「介護休業給付」の手続きをしてください。賃金が支払われなかった期間、賃金日額の40%が支給されます。これを受けるには、介護休業開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12ヵ月以上あることが必要です。介護休業開始時点で、介護休業終了後に離職することが予定されている人には支給されません。


 期間はどのくらいですか。


 対象家族1人につき、1つの要介護状態ごとに1回、通算して93日を限度として、原則として職員の方が申し出た期間です。


 3ヵ月程度では介護状態が終わるとは考えられません。そのあとはどうするのですか。


 残念ながら介護休業給付期間が終わると、しばらくして退職してしまう方が多いのが実態です。介護は数年あるいは10数年続くことも考えられますから、介護休業中に関係機関と相談して入居施設を探すなど、介護の体制を整えると良いでしょう。


 育児休業の場合、社会保険料は事業主も本人も免除されますが、介護休業中の社会保険料はどうなるのでしょうか。


 社会保険料の免除制度はありません。したがって本人負担分は納めてもらわなければなりません。


 今回、全く予期せず親が倒れたため急に介護休業が必要になりました。産休・育休と違って休業中の体制を整える暇もありませんが、制度上の対策はないのですか。


 自治体によってはあるかもしれませんが、ほとんど絶望的です。長時間労働が当たり前の企業で、中心的に働いている40代・50代の社員の親が倒れると大変です。介護離職は企業にとっても大変な損害です。しかも、かなりのエリートでもその後に思うような再就職ができず、ほとんどが介護離職を後悔しているそうです。


 社員の奥さんは介護してくれないのですか。


 単身や共働きの場合もありますし、そもそも「嫁」が犠牲になる時代ではありません。介護問題は他人事でなく、75歳未満は要介護率が3%、75歳以上は23%で、2025年には団塊の世代全員が75歳以上になります。


 「2025年問題」ですね。どのような対策が考えられますか。


 まず、これまでのような長時間労働をなくすことが大切だと思います。家族もかかわりながら制度を利用して対応できるようにすることができるといいと思います。

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