奈良県保険医協会

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介護報酬の抜本的引き上げと介護職員の処遇改善を

 本年4月の介護報酬改定は、1.65%増の介護職員処遇改善加算を含めても全体で2.27%(処遇改善を除くとマイナス4.48%)の大幅引き下げとなった。基本報酬の多くが引き下げとなり、介護施設やサービス提供事業所は立ち行かなくなってしまうだろう。介護職員の処遇や労働条件を改善するためには介護報酬の引き上げが不可欠であるのに、トータルがマイナス改定であれば、介護職員の処遇改善にはつながらない。介護は医療との関係性も高く、高齢者が安心して住み続けられる環境整備として地域社会において介護施設や介護サービスの確保は欠かせない。
 保団連は、介護報酬改定談話で、①社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するもの、②介護に関する新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、③介護担当者の労働条件を改善するためには介護報酬全体の引き上げを図る。④介護崩壊を食い止めるために、国庫負担を拡大し介護報酬のプラス改定を行うことを求めた。
 在宅医療に続き、介護報酬の大幅削減になったことにより、日本医師会は「全体マイナスは極めて残念」とし、2016年診療報酬改定、2018年診療報酬・介護報酬同時改定に向け必要な財源確保と中長期的な視点で人材確保やサービスのあり方を検討するよう求めた。
 全国老人福祉施設協議会は報酬改定について「かつてない劇的削減」とし、記者会見で1施設あたり1500万の基本報酬の減収、介護職員4人分の人件費に相当すること、利用者のサービス質・量の低下、人材流出を懸念すると指摘した。
 そもそも介護報酬は、介護事業所の必要経費を補填するとともに、公的介護保険の範囲や質・量を規定するものだが、その役割はそれだけにとどまらない。平成22年版厚生労働白書では、『とりわけ医療・介護分野については、経済波及効果および雇用創出効果がある。このため、…成長と雇用の創出が期待される』『社会保障を持続可能なものにするとともに、その充実を図り、不安を取り除くことで消費を促し、経済を活性化させることも期待できる』と明記している。
 4月実施の制度改定によって、要支援は介護保険サービスからはずされ、地域支援事業として市町村が行うことになるが、今まで受けていたサービスは受けられるのか、不安が広がっている。「介護の社会化」を合言葉に始まった介護保険制度であるが、保険料を払い続けても必要なサービスが受けられなければ「保険あって介護なし」である。国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。

【奈良保険医新聞第391号(2015年4月15日発行)より】


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