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人工肛門、心臓ペースメーカーで障害年金

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

人工肛門、心臓ペースメーカーで障害年金
【2019年11月】


 パート従業員の夫が直腸がんで死亡しました。死亡した夫は、退職して国民年金にしか加入していなかったそうです。子供がいないと遺族基礎年金は支給されないと聞きました。彼女はパート収入だけでは大変なのでもう少し収入の多いところへ転職したいと言ってきました。優秀な従業員なので、何とか思いとどまらせる方法はないものでしょうか。


 お亡くなりになった方が直腸がんになった時は、勤めていませんでしたか。


 3年前までは大手の企業に勤めていました。この頃、すでにがんになっていたそうです。


 それなら厚生年金に加入していましたから遺族厚生年金が支給される可能性があります。遺族厚生年金は加入条件を満たせば初診から5年以内に死亡したときは支給されます。ところでその方は、直腸がんでしたら人工肛門を付けていませんでしたか。


 3年前から着けていました。世話が大変だったようです。


 それなら障害年金も受給できます。


 もう死亡してしまったんですよ。死亡してからも請求できますか。


 死亡してからもできます。大切なのは保険料納付要件です。納付要件は、①初診日のある前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について保険料が納付または免除されていること、②初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと――なとどです。


 それなら心配ありません。ずっとその大手企業に勤めていました。いつからの分がもらえるのですか。


 人工肛門の場合、造設した日から起算して6ヵ月を経過した日からです。


 そうすると2年以上さかのぼって受け取れるのですか。それと遺族厚生年金も受け取れるのですか。


 そうです。障害年金というと手足が不自由だとか、目が不自由とか、外見で判断できるような障害だけが対象になっていると思っている人が多いですが、障害認定基準に合えば内部障害でもいいのです。特に心臓ペースメーカーを装着したのに、障害年金を受け取っていない人が多いですね。新膀胱を増設した場合人工透析でも支給されます。


 彼女も退職しないで済みそうです。ところでペースメーカーを装着している人は障害者手帳を受けている人が多いと思います。こうした人は障害年金を受けているのではないですか。


 障害者手帳と障害年金を扱う窓口は異なるので、障害者手帳を持っている人が障害年金を受けているとは限りません。
 ただ、障害年金は一部、例外はありますが基本的には65歳までに請求しなければなりません。


 知らないばかりに障害年金を受けていない人は多いのではありませんか。


 そうです。障害年金の受給者は約200万人ですが、実際には本来もらえる人は800万人くらいという見方もあります。障害年金については誤解も多く、要件を満たしているのにもかかわらず申請していない人が多いので、医療関係の方も関心を持っていただきたいと思います。

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