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二重就職の看護師がいる

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

二重就職の看護師がいる
【2005年11月】


看護職員で別の診療所でアルバイトをしているものがいることがわかりました。私の医院では兼業を禁止しています。就業規則にも「医院の許可なく、在籍のまま他の事業所に就職しないこと」としています。問題の多い職員なのでこの際解雇したいのですがどうでしょうか。


確かに就業規則に兼業の禁止規定があっても、裁判所は「本業に差し支える」という言葉を挿入して「兼業禁止規定」を読みます。したがって先生の診療所の業務にどの程度支障をきたしたかが問題です。


しかし、この職員ははじめは「どこにも勤めていません」と言い張っていました。このようなウソをつくことが問題ではないでしょうか。


確かに問題です。それにしてもどうしてアルバイトをしていることがわかったのですか。


私の知り合いのクリニックで働いていました。会合でそこの先生と話しているとき偶然わかりました。はじめは勤めていませんと言い張っていましたが、確認情報があるし嘘をつくのはまずいと指摘すると「しました」というありさまです。


どうしてその診療所で働いたのでしょうね。


最近夫と別居し、そのため費用がかかったためアルバイトをしたと言っています。月に4日働いて5万円程度稼いでいたようです。


本人にも事情があったようですが、具体的に業務に影響したのでしょうか。


そこで働いたことによる実害はありません。


そうすると、先生としては納得できないかもしれませんが、職場秩序に影響せず、しかも労務提供に支障が無いときは「二重就職禁止違反」とはいえないとされます。ただ、支障のあるものは懲戒対象となるというのが判例の流れです。つまり、労働契約上義務付けられていない時間帯に何をしようと自由でしょという考え方です。しかし、支障をきたすような長時間におよぶコンビニでのアルバイトや、スナックでのホステスなどのアルバイトは問題になります。


納得できませんがそういうものですか。ところでアルバイト先で労災事故なり通勤災害になったときはどこの責任になりますか。


当然そのアルバイト先の事業所の責任になります。労災保険の休業補償もアルバイト先の賃金だけを基準に給付が行われます。ところで、先ほど問題が多い職員ということでしたがどのように問題が多いのですか。


たとえば私が若いきれいな職員にしか声をかけないとか、特定の人に厳しいとか、まったく根も葉もないことを言いふらしたりします。


先生の医院の就業規則に「医院の名誉を傷つけまたは害する行為をしないこと」とあります。この規定に基づいて注意したりしないのですか。


就業規則をしみじみ読んだことが無いので気付きませんでした。保団連発行の特集・経営対策シリーズの冊子『医院経営と雇用管理』(月刊保団連臨時増刊号No.843)をそのまま写しただけなのでよく読んでいませんでした。


保団連経営税務部の三田温部長もこの冊子の中で「厳しい雇用環境を乗り越えるために本誌のご活用を!」と訴えています。先日も開業講座で私が労務の話をした際、この冊子を紹介したところ多くの方がご存知ありませんでした。保団連の知恵が詰まっていますからご活用をよろしくお願いします。ところで先ほどの話ですが、就業規則に基づき規律違反は始末書を取るなりきちんと対応する必要があります。


そこまでギスギスしてもねえ…。


しかし、注意したりして教育をしないでいきなり解雇ということはできません。それと職員に対しては、意識的に短時間で結構ですから、なるべく全員に声をかけるようにしてください。

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