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一人医療法人になるが社会保険の加入は強制か 老齢厚生年金は受けられるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

一人医療法人になるが社会保険の加入は強制か
老齢厚生年金は受けられるか
【2005年10月】


息子が医学部を卒業したのを機に、税理士とも相談して一人医療法人にすることにしました。税理士から、社会保険(健康保険・厚生年金保険)については社会保険労務士に相談するようにいわれました。まず社会保険にはどうしても加入しなければいけないのでしょうか。


法人はすべて強制加入です。特に一人医療法人に対しては、社会保険事務所から厳しく加入するようにいってきています。


でも社会保険に加入していない会社はけっこうありますね。


最近、新聞(日経8月21日付)でも取り上げていますが、法人と、従業員5人以上の個人事業所は加入義務があります。法人は、日本に300万近くあります。しかし、厚生年金に加入しているところは163万しかありません。社会保険庁も加入のために努力していますがあまり進んでいません。「強制のないところに社会保障はない」といわれているように抜本的な改革が必要です。実際にはほとんど行われていませんが、厚生年金に未加入の法人には罰則もあります。


私は、勤務医の時に厚生年金に10年加入し、その後20年以上は国民年金に加入しています。あと3年で60歳になります。年金はどうなるのでしょうか。


現在、先生は個人事業主なので厚生年金に加入できません。60歳の時点で厚生年金に加入していなければ、厚生年金と国民年金の期間を合算すると25年以上ありますから老齢厚生年金の一部である報酬比例部分は受け取れます。


一人医療法人になり、厚生年金に加入するとどうなりますか。


先生の場合、かなりの役員報酬になりますから、年金は全く支給されません。


個人事業主なら年金は支給されるのですか。


そうです。厚生年金に加入していませんからどれだけ収入があっても年金は支給されます。


私だけ厚生年金に加入しないことはできますか。


理事になり働いていますからできません。加入していないと遡って加入させられます。


私は働いている限り年金は受け取れないのですか。


65歳になると、老齢基礎年金は受け取れます。しかし老齢厚生年金は一定の収入以上の人は受け取れません。
年金の月額と給料の合計が48万円以下の場合は、年金は減額されませんがそれ以上になると調整があります。先生の年金月額は、厚生年金の期間が短いのでせいぜい3~4万円です。したがって役員報酬を50万円未満にしなければ年金はゼロです。


私は、300万円は取りたいと思っています。


そうすると、全く年金は支給されません。しかも2007(平成19)年4月からは、70歳過ぎて厚生年金は止めても在職老齢年金の制度が適用されるようになりました。


現在、医療保険は、医師国保に加入していますが健康保険に加入しなければならないのでしょうか。


医師国保に加入しながら厚生年金に加入する方法もあります。


どちらが得でしょうか。


保険料は医師国保が安く療養の給付もいいので良い点もあります。健康保険のメリットは傷病手当金の額が大きいということでしょう。


パートの社会保険加入はどうなるのでしょうか。


労働時間にして通常の労働者の概ね4分の3以上働く場合は加入が義務付けられています。

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