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パート職員が有給休暇を請求してきた

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

パート職員が有給休暇を請求してきた
【2018年1月】


 私のところは週2日勤務のパートが2人います。そのうちの1人か「有給休暇をいただけますか」と聞いてきました。パートにも有給休暇を与えなければいけないのでしょうか。週2日のパートには必要ないと思います。私は勤務医の時は有給休暇などとったことはありませんでした。


 お気持ちはわかりますが、パートにも有給休暇を与えなければなりません。その方はどのくらい勤めた方ですか。


 3年になります。


 そうすると年間4日になります。これまで一度も有給休暇を取っていなければ昨年の分も4日ありますから、その方は8日の権利があることになります。それ以前の分は時効で権利はありません。


 私のところは休日もたくさんありますが、それでも与えなければなりませんか。


 休日と休暇は違うのです。休日はもともと労働義務のない日です。休暇は労働義務のある日に労働を免除する日です。有給休暇は文字通り給料を支払って休ませる日です。英語でいうと「ペイド・ホリデイ」です。
 最近では高校や大学などで弁護士、労働組合の幹部や専門家が出前授業を行いアルバイト・パートの権利について知識の普及を行っています。今後は有給休暇をきちんと与えることを前提に職員を採用していかなければならなくなります。


 しかし、大学病院の医師などほとんど有給休暇を取っていませんよ。周りの診療所でも有給休暇をあまり与えていないようです。


 確かに、アンケートでも勤務医の4割がほとんど有給休暇を取っていないという調査結果が出ていますし、他の医療スタッフも似たり寄ったりです。


 私に言わせれば日本の医療関係者のある意味自己犠牲で成り立っていると思います。


 しかし、保険医協会会員でスウェーデンに留学した方から聞きましたが、数週間単位の有給休暇を、医師をはじめ医療スタッフは取っているそうです。


 あなたは現実を知らない。そんな理想的なことを言っていたら診療所はやっていけませんよ。


 確かに、そのような面もありますが、少子高齢化のもとで求人難はいよいよ深刻化します。「低賃金で有給休暇もない。しかし社会的に意義ある仕事です」などと言っても若い医療関係者は来てくれません。
 有給休暇は単に職員のリフレッシュ・健康のためにあるのではありません。極端な言い方ですが医療機関存続の条件になりつつあります。辞めるときにまとまって有給を請求してくることがよくありますが、これは転職先で働くためのリフレッシュになるだけです。有給休暇は日常的に与える方が今の職場の役に立つと、私は思います。


 難しい問題ですね。働き方について考えなければならないですね。

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