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セクハラ行為をする職員を懲戒解雇したい

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

セクハラ行為をする職員を懲戒解雇したい
【2014年10月】


 在宅診療をしています。かねがね、セクハラ・パワハラはするなとみんなに注意していましたが、運転手をしている職員がセクハラ・パワハラまがいのことをしているそうです。「懲戒解雇」にしようと思いますが、トラブルになる可能性はあるでしょうか。


 当人は、セクハラ・パワハラ行為をしたと認めているのですか。


 いいえ。当人は「セクハラ・パワハラ行為は一切していない」と言っています。しかし、多くの職員は「訪問車にドクターが乗っている時はおとなしいが、訪問看護師と2人きりの時は大声を出したり、性生活に関する卑狼な質問をしたりする」と言うのです。本人は否定するものの、パワハラ・セクハラ行為は問違いないと思います。


 被害にあった職員はどう言っていますか。


 被害者は「自分が訴えたことは黙っていてくれ」と言っています。


 被害者にはここで黙っていては解決にならないことを伝え、対策を取るようにする必要があります。この場合、少なくとも被害者からは記憶が薄れないうちに詳細な「事情聴取書」を取り、本人サインをもらっておくことです。


 どうしてそのようなものが必要なのですか。


 訴えた当人が退職したり、連絡が取れなくなったりすることがあるからです。診療所の就業規則の懲戒解雇事由の中にセクハラ・パワハラ」は記載されていますか。


 はっきり記載されていませんが、「その他、前各号に準ずる程度の不適切な行為があった時。」という条項があります。


 通常の解雇ではそのような条項でも構いませんが、懲戒解雇は限定列挙説と言って、就業規則に明確に区別されて規定され、さらに弁明の機会があるという規定が必要となります。現に私の関与先医療機関では、誰が見ても懲戒解雇と思う事例でしたが、就業規則が不備であったため逆に訴えられ、結局かなり高額の損害賠償額を支払うことになってしまいました。


 それでは今回は、懲戒解雇をするなということですか。


 懲戒解雇は、はっきりした証拠や書面による加害者本人の事実調書でもないと難しく、今回はこじれる可能性が大きいと思います。それよりも、セクハラした職員を説得して退職届を任意に提出させ、その際には「退職届を出さなけれぱ懲戒解雇にすると脅かされ、やむを得ず退職届を書いた」などと言われないようにするため「退職合意書」を取っておくことです。今後は日常的に注意をしておく必要があり、口頭での注意を聞かない場合は「業務改善指導書」などを出しておくと良いでしょう。口頭で注意した時も、担当者にその旨を報告書として作成させておくと、仮に裁判になった時などに有利になります。
※退職合意書、業務改善指導書は筆者のウェプサイト(http://www.sogaoffice.jp/shoshiki/shoshiki_top.html) からダウンロードできます。

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