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ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~①

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2020年1月】ある日突然訪れる「税務調査」
~相続税編~ ①

昨年12月17日の日経新聞にこのような記事が!

 相続税申告漏れ過去最多!「国税庁は、2019年6月までの1年間に全国の国税局などが実施した相続税の税務調査の結果を発表した。相続人から無申告だったのに申告漏れが見つかったケースが前年度比20.2%の1232件に上り、追徴税額も同15.0%増の約101億円で、いずれも過去最多だった。」

 今、税務署は相続税の無申告、所得隠しに対して年々、厳しさを増して対応しています。行き過ぎた節税があれば、すぐさま塞ぐ。皆さんは不思議に思うかもしれません。「申告しなくてもバレないのでは」と。無申告や財産漏れの場合、税務署はどのようにして、相続税の対象者を特定するのだろうか。

 国税庁のデーターベース「KSK(国税総合管理)システム」に法人・個人の金融取引データーが蓄積され、納税者の所得や資産の状況を捕捉することができます。さらに、マイナンバー制度の導入により、金融機関等の照会情報を入手することが可能になります。不動産の場合であれば、法務局から移転状況が知らされます。国税が張り巡らせた網は、もはや容易に振りほどけません。また、悪質に税を免れたと認定されれば、重加算税40%のペナルティーが本税に上乗せされ課税されます。

 この情報化された厳しい税務調査の実態を踏まえて、今回は3回シリーズで、相続税の税務調査に対する正しい知識と事前の対策方法をお伝えします。相続税は相続が起こってから10カ月以内に申告しなければなりません。10カ月というと長い期間のように感じるかもしれませんが、実は意外に短いものです。相続財産が預金だけであれば、スムーズに運びますが、すべての財産を漏れなく把握するには、相当の時間を要します。そして、遺された財産を誰がどのように引き継ぐのかという遺産の分割協議にも時間がかかります。

 そして、10カ月以内になんとか申告書を提出し、納税を済ませ、一安心というわけではありません。相続税には、まだまだ続きがあります。それが税務調査です。相続税の申告があったすべての相続に税務調査が入るわけではありませんが、おおよそ4件に1件の割合で調査が行われているのが現状です。しかも、税務調査の連絡は相続税申告を提出して1年以上を経過したころに突然、連絡が入ります。まさに、忘れたころにやってくるということです。

 では、予期しないときにやってくる税務調査の実態とはどのようなものであるのか。具体的な事例を次号でご紹介します。

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