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【第49回】採用前の研修を行った場合、賃金の支払いは必要ですか

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

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【第49回】採用前の研修を行った場合、賃金の支払いは必要ですか


 昨年の12月1日採用の職員に対して、業務を早く覚えてもらうために、採用前に10日間研修をしました。この場合何らかの賃金を支払う必要があるのでしょうか。職員が不足していたこともあり、採用日より早く来てもらいました。

◇使用従属関係が認められるかどうかで

 見学や体験的なもので使用者からの指揮命令を受けていない場合は、労働者と認められないので賃金支払いの対象にはならないでしょうが、次のような場合は労働に従事した者として賃金を支払う必要があるでしょう。

  1. 一般的に研修への参加は、直接的には労務の提供でないようにみえますが、採用後職員として必要な知識や技能、業務内容を身につけるために行われる場合で、参加が強制される場合には、使用者の指揮命令に服し、労務を提供(あるいは将来の労務提供の準備活動としての労務提供)している時間となります。
  2. 仮に参加が強制されていない場合、任意参加の形をとっている場合でも、研修に参加しなかったことによって不利益を受けるような場合は実質的に強制されたものとみなされます。

◇直接、業務に従事させた場合は

 今回のようなケースは、研修期間となっていても、直接業務に従事してもらっているのですから、使用者と採用内定者との間に使用従属の関係が認められ、労働者に該当するものと考えられます。

 賃金ですが、一般的には、研修時間に応じた時間給やその間アルバイト採用として賃金を支払う医院が多いようです。

◇試用期間の賃金が本採用後の賃金と異なる場合は

 職員の適性をはかるため試用期間を設ける場合があります。試用期間については、特に明確な規制はありませんが、試用期間の賃金が本採用後の賃金と異なる場合に、求人内容の記載にそのことの表記がなかったために、トラブルになることがあります。試用期間の長さ、延長する場合の延長期間、そして試用期間中の賃金を、必ず表記するようにしましょう。

 採用時の月例給与額(基本給プラス諸手当等毎月定期的に支払う金額)をどうするかは求人から採用における労務管理のひとつのポイントになります。世間相場とするか、少し高めに設定するか、また試用期間中も同額としそのことをアピールするか、試用期間中は減額するか等慎重に検討したいものです。

◇わずか3日で一方的に辞められた場合でも

 賃金とは、名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に対して支払うものです。3日働いたのですから、その対償としてその分の賃金を支払わなければなりません。あとでトラブルにならないようにしておきましょう。

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