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【第48回】「年次有給休暇は次年度に繰り越すことはできない」の規則は無効

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第48回】「年次有給休暇は次年度に繰り越すことはできない」の規則は無効

◇時効とは

 民法でいう時効には、一定の期間の経過により権利を取得する「取得時効」と、一定の期間の経過により権利が消滅する「消滅時効」の2つがあります。

 「消滅時効」については、一般債権の消滅時効は10年又はこれより短い時期を定めた金銭その他の給付債権の消滅時効は5年ですが、月給・週給・日給のように月単位以下で決めた雇人の給料については1年の短期消滅時効とされています。

 ただし、民法は一般原則を定めたものであるため、他の法律によって、異なる時効が定められている場合には、そちらが優先することになります。

◇労働基準法上の諸権利

 労基法では、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効で消滅する。」と定めています。労働者にとって重要なものである賃金などの請求権の消滅時効が1年ではその保護に欠ける点があり、さりとて10年ということになると、使用者にとって酷すぎることから、2年とされたものです。

 この消滅時効の適用を受けるものとしては、賃金請求権、休業手当請求権、災害補償請求権などがあります。

◇退職手当請求の時効は5年間

 退職手当については、高額になる場合が通常であり、資金の調達ができないこと等を理由にその支払に時間がかかること、労使間において退職手当の受給に関し争いが生じやすい等から、昭和63年4月から5年に延長されました。

◇年次有給休暇請求権の時効も2年間

 年次有給休暇の請求権は、労基法の規定によって消滅します。年次有給休暇の請求権は、基準日に発生するものであるので、基準日から起算して2年間、すなわち、当年度の初日に発生した休暇については、翌年度末で時効により消滅することになります。

 したがって、就業規則で「年次有給休暇は翌年度に繰り越してはならない。」と定めても当年度経過後における権利は消滅しないことになります。(昭23・5・5、基発686号)

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