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【第44回】大切な院内研修会の日に年休取得を強行

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第44回】大切な院内研修会の日に年休取得を強行


 接遇マナー研修を教育機関に委託、事前に講師に現場を見てもらい、その様子を踏まえての研修会を準備していました。ところが、その前日にAさんは、院長の机の上に申請書を置き、年次有給休暇の取得を強行する事態が生じました。

 職員から年次有給休暇の時季指定があった場合には、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、当然に職員が指定した時季に年次有給休暇が成立します。したがって職員の休暇取得の申出のみによって成立し、使用者は「事業の正常な運営を妨げる事由」のない限りその指定された日に休暇を与えなければなりません。

◇使用者の時季変更権

  職員の年次有給休暇の権利の行使と使用者の事業運営との調整を図るため、労基法は、職員が指定した時季に年次有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は「他の時季にこれを与えることができる」旨の規定を設け、請求どおりに与えず、これを変更させて与えることができる権限を認めています。これを「時季変更権」といいます。

◇事業の正常な運営を妨げる場合とは

  裁判例は、「当該労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきである。」としています。これらの判断は、第一次的には使用者にあるが、使用者が恣意的に判断することは許されません。

◇研修期間中の取得と時季変更権

  年次有給休暇の取得によって訓練を欠席しても予定された知識、技能の取得に不足を生じさせないものであると認められない限り、こうした期間中の年次有給休暇の取得は事業の正常な運営を妨げるとして、時季変更権の行使を適法と認めています。(NTT事件平一二・三・三一最二小半)

  当該研修等の内容・必要性、参加の非代替性、研修期間等を考慮して判断されます。

◇時季変更権行使が可能なら事後に行使することも

  時季変更権は、本来、年次有給休暇が取得される期間の開始されるまでに行使されるべきものですが、今回のAさんのような休暇申請に対しては、時季変更権の行使は休暇取得日よりも後、すなわち、事後的に行うことになってしまいます。この点について、最高裁は、「労働者の休暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使する時間的余裕がなかったようなときには、それが事前になされなかったことのゆえに直ちに不適法となるものでなく、客観的に右変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が遅滞なくされたものである場合には、適法な時季変更権の行使があったものとしてその効力を認めるのが相当である。」としている。(此花電報電話局事件 昭五七・三・一八 最一小判)

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