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【第40回】始業時刻より早く出勤するように指示できるか

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第40回】始業時刻より早く出勤するように指示できるか

 始業時刻は午前8時30分と決めていますが、口頭でその準備のために30分前に出勤するように指示しています。その時刻に遅刻した職員を注意したのですが、当の職員は納得できないといっています。どう考えたらよいか。

◇労働時間とは

 労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間のことであり、拘束時間から休憩時間を除いたもの。労働時間には、現実に働いている時間のほか、使用者の指揮下にあって待機している時間も含まれます。

◇30分前に出勤するように指示したことが問題です

(1)違法ですから即刻是正することはもちろん

 自分が労働者として採用されたときに、労働契約で定められた時刻より早く出勤を求められても、快く納得できないでしょう。このような労務管理は、安易な方法で一時的に得したようですが、長期的にみれば、労使関係で何よりも大切にしなければならない、職員との信頼関係を弱め、本来使用者として力を入れなければならない業務の効率化や職員の育成に目がいかなくなり、経営基盤を弱体化していく事になるのではないでしょうか。

(2)相談しながら改善していくことも重要

 ある医院では、準備時間を15分としていました。あるとき職員から「30分前から労働時間としてほしい」との要望がだされました。「他の職員は15分ですから、あなただけ特別扱いできない」と回答したあとに、何人かの職員に実際はどれくらいかかっているのか尋ねると「30分かかる」とのこと、実際30分前から出勤して仕事をしていました。始業時刻前の開設準備時間は、院長が出勤していない時間帯だけに実態がわかっていませんでした。院長は当番の人数を増やして15分前にするか、いまのままで30分前にするか職員の希望を聞きました。労働時間の把握も即改善することを約束されたようです。どんな職場でも行き違いは起こります。実際に業務を行っているのは職員です。重要なことは職員と意見交換し、現状把握に努め、改善していく姿勢ではないでしょうか。

開業医の雇用管理ワンポイント

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