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【第29回】改築等で一定期間休診するときの休業手当とは

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第29回】改築等で一定期間休診するときの休業手当とは

 10月の祝日を利用して2週間程度改築する予定です。休業手当が必要だと思うのですが? できるだけ、無駄な人件費は支払いたくありません。いい方法を教えてください。

◇休業手当の意義

 労基法は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当(休業手当)を支払わなければならない。」と規定しています。

 ノーワーク・ノーペイの原則に従えば、労働者は賃金を受けることができず、休業期間中収入の道を断たれることになりますが、労基法は休業手当を支払うべきことを罰則つきで規定し、労働者の生活を保護しています。

◇使用者の責に帰すべき事由による休業とは

 「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、使用者として休業になることを避けるために、最善の努力をしたかどうかによって判断されることになります。通常、いわゆる不可抗力による場合以外は、使用者の責に帰すべき事由に該当するものと考えられています。

 台風による不可抗力の休業であれば、使用者の責に帰す休業にあたりませんので、休業手当の支払いは不要といえます。

 なお、休業手当は、休業期間に対して支払われるものであるので、就業規則等によって所定休日とされている日については、そもそも賃金支払い義務がない日であるので、休業手当は支払う必要はありません。

 改築等で一定期間休診する場合は、年次有給休暇の計画的付与で対応するとか、休日の振替を行う等必要な対策を行うようにしましょう。

◇使用者都合による採用内定者の自宅待機は該当します

 労働者の事情に基づく休職、職場規律違反に対する制裁としての出勤停止は、使用者の責に帰すべき休業に該当しませんが、雇入れ日を労使で確定しているのに、使用者都合で延期し、一定期間自宅待機させる場合は休業手当を支払わなければなりませんのでよく注意してください。

◇医院の都合により午前中で業務打ち切り、休業手当の計算は

 1日の一部について休業したような場合は、その日について平均賃金の6割が支給されていればよいことになります。

 仮に、平均賃金が8,000円、時間当たり賃金が1,000円の職員が、勤務は午前、午後とも4時間で午後休業したとすれば、現実に働いた時間に対して支払われる賃金は4,000円、この職員の平均賃金の60%は4,800円ですので、この場合は差額の800円を支給すれば足りることになります。

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