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【第16回】年次有給休暇②

開業医の雇用管理ワンポイント 社会保険労務士 桂好志郎(桂労務社会保険総合事務所所長)

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【第16回】年次有給休暇②

年休取得で皆勤手当のカットは許されるか?

 年休の取得者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはなりません。例えば、賞与や皆勤手当の算定に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤またはこれに準じて取り扱うこと等が不利益扱いの例とされています。

午前診のみの土曜日に与える年休を半日扱いにするのは違法か?

 半日勤務の土曜日に年次有給休暇を取得した場合、通常の日の労働時間数の半分であってもその日に労働させなかったことに変わりはありませんから一日の有給休暇を与えたことになります。

 設問のように1日として差し支えないものを、0.5の有給休暇として処理することによって、もう1回、別の土曜日に有給休暇をとることができ、職員にとっては有利になりますので一向に差し支えありませんし、むしろ労基法を上回る労働条件を定めることは法の望むところです。

 なお、職員が1日単位で時季を指定しているにもかかわらず、これに反して、使用者が半日単位で付与することはできません。

半日単位への分割は? 望ましい半日単位とは

 行政解釈において「年次有給休暇は、一労働日を単位とするものであるから、それ以下に分割して与えることはできない」とされていましたが、労基法改正にともなって「年次有給休暇は、一労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない」に見直されました。即ち、労働者の請求に対して使用者はこれに応じて付与しなければならない義務はないが、半日単位で付与しても違反ではないという事です。 

 半日単位の解釈でむずかしいのは、午前と午後の勤務時間が違う場合です。「一労働日」とは原則暦日計算によることとされていますが、「半日」とは暦日の半分、すなわち「午前と午後」と解するのが一般的と言えます。ただし、「所定労働時間の2分の1」といった時間単位の分割も、直ちに労基法違反とされることはないかとも思われますが、多少の時間の差よりも午前又は午後をフルに休養に充てることのほうが制度の本旨にかなっているように思います。

欠勤した場合に年次有給休暇を充てる定めは、病欠への振替は?

 欠勤した職員で年次有給休暇が残っている場合に「欠勤に先んじて年次有給休暇を充てる」との定めを設けることはできません。年次有給休暇は、職員が具体的に時季を指定し、これに対して使用者が適法な時季変更権の行使をしない限り、その月日が休暇日となります。使用者が職員の意思のいかんにかかわらず、欠勤した日に年次有給休暇を与えることはできません。

 一方、病気等の事由によって欠勤した場合に、その日を後日年休に振り替えることの申入れがあった場合、使用者がこれを拒否しても労基法違反にはなりませんが、振替を認めること自体は差支えありません。

開業医の雇用管理ワンポイント

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