奈良県保険医協会

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「罪」多い安倍政治――継承でなく総括を

 8月末安倍晋三首相は自身の健康問題を理由に、突然辞任を表明した。この辞任発表の後の世論調査でそれまでの30%台の低い支持率が急上昇したと伝えられる。

「継承」掲げた菅首相
 NHKはじめ大手メディアの伝え方も安倍政権の功罪のうち「功」の部分を取り上げる論調が目立った。病気で退場する人を悪く言わない、という日本人特有の美意識なのだろう。後継首相となった菅義偉氏は安倍政治の継承を訴えている。ならばこそ安倍政権の功罪を今明確にしなければならない。

解釈改憲、辺野古米軍基地推進
 十分な国会論議もなしに、解釈改憲と言われ、集団的自衛権の行使を可能にした安保法制や共謀罪、特定秘密保護法の成立など、実質的に平和憲法の骨格を脅かし、国民の自由を侵害する法律を反対意見を封殺し成立させた。辺野古で強行されている新基地建設も県民投票で示された沖縄の民意を無視し、着々と進んでいる。

モリトモ・カケ・サクラ
 更には公私混同、権力の乱用とされる森友・加計・桜問題である。官僚に忖度させ、自殺者まで出しながら本人はもとより、組織ぐるみで隠ぺい・幕引きを図る姿勢は決して辞任表明で許し、忘れ去ってはならない。

アベノミクスの正体
 アベノミクス、に関しても多くの識者は出口戦略の欠如、政策の根本的な過ちを指摘している。株価上昇にしても経済実態のない公的資金による株価維持で、一部の大金持ち、大企業にのみにしかその恩恵は及んでいない。雇用に関しても今回のコロナ禍で明確になったように非正規就業の拡大が統計的数字の改善を演出しているに過ぎない。

消費税増税の傍ら拡充されない社会保障
 また消費税増税の目的だと言われた社会保障制度の拡充に関しても、一体どれぐらいの人が社会保障の拡充を実感しているのだろうか。医療保険は相変わらずの低報酬、窓口負担増が続いているし、介護保険もますます受給が困難な制度に改悪されている。年金も受給年齢の引き上げや、マクロ経済スライドにより実質的な給付抑制がより進んでいる。消費税増税が社会保障拡充に繋がっていないのである。

異論・批判を敵視
 「こんな人たちに負けるわけにはいかない」17年の都議選の街頭演説での野次に反応して発した安倍氏の言葉である。この言葉に象徴されるように、異論や批判に耳を傾けず、相手を激しく攻撃して対立をあおる。このような安倍政権の政治手法が国民の間に分断を招いたとも言える。国会の論戦に際しても「ごはん論法」とも言われるように、まともに質問に答えずに国会軽視の姿勢を続けてきた。

総括と民主主義の回復こそ
 戦後一応は保たれてきたと言える日本の民主主義を根底から覆し、破壊し、まさに戦後レジームをぶち壊したその張本人こそが安倍政権である。
 その安倍政権を継承すると臆面もなく言う菅首相には安倍政権の総括を求め、民主主義の回復を訴える。

【奈良保険医新聞第457号(2020年10月15日発行)より】

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