奈良県保険医協会

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「混合診療」の合法的具体化――
特定療養費制度で「制限回数を超える医療行為」

 昨年暮れのいわゆる「混合診療」の閣僚合意にもとづき、特定療養費制度の拡大の検討がすすめられている。
 混合診療問題をめぐっては、財界などからの規制改革・構造改革推進論の猛烈な圧力をもとに、これに抗する医療関係者(当会や保団連はもちろん、日医や関係諸団体などなど)や厚労省、政治家も含めての激しい攻防があり、首記の「合意」で決着を見た形になった。
 法改正をめざす部分もあるが、それ以前にただちに着手できる部分として、特定療養費制度の拡大での対応が盛り込まれ、そのもとで中医協を舞台に具体的な改革論議が進行している。
 2006年の診療報酬改定(介護報酬改定も同時実施)に向けた、以前からの医療費抑制のあれこれの議論とも相まって、特定療養費制度の対象範囲の大胆な拡大が懸念される。
 そもそも健保法の枠内に、合法的に設定された混合診療ともいえる特定療養費制度は、患者負担を大幅に求めるものであり、同時にその拡張は、既存の保険給付の代替・縮小につながる恐れが大きい。
 具体化へ動き出しているおもな項目は三つ。(1)国内未承認薬の使用、(2)必ずしも高度でない先進医療、(3)制限回数を超える医療行為――である。
 このうち、「制限回数を超える医療行為」は日常診療にも身近に立ち現れてくる。
 点数表上、指導・検査・処置・手術・リハなど、たとえば月に何回までと、算定回数の定められる項目は多くある。医学的に合理的とはいえない制限も少なくない。現場では、やむなく医療機関の負担で(無償で)これを実施したり、または実施できないでいる場合もあろう。
 もし、該当する事項(たとえば制限回数を超えて実施する検査など)が特療化されれば、その分だけを患者さんから「特別の料金」として徴収することができるようになり、費用面で実施の道が開けるので、少なくとも現状の改善にはなると考える向きもあろう。
 しかし、医学的にみて必要と判断できるなら、特定療養費制度とするのではなく、保険給付されるのが当然であるはず。診療行為について給付できる部分とそうでない部分を混在させるのは、まさしく混合診療であり、これが一旦導入されれば、間違いなく、既存の制限回数はより狭められる。月4回だったものは月2回に、月2回だったものは月1回へと保険給付は狭まり、後は特定療養費制度を用いよ、となる。
 歯科医院では症例によって、補綴(入れ歯など)では保険と自費の・ ・鬚魎擬圓気鵑貿・訃豺腓眥舛靴・覆ぁ・修Δ靴晋・覆・・錡鐃芭鼎龍纊垢砲泙嚢④・辰討い・莪貶發・垢阿修海埜‘い気譴討い襦・br> 今まで保険で出来たことが、自費扱いになれば、窓口ではトラブルも心配される。患者さんへの説明もより多く求められる。患者さんの負担能力で多くの治療場面の判断が迫られるとなっては臨床の場は荒廃していくだろう。こんなことは許してはならない。
 混合診療問題は、昨年に「阻止」して決着済みではなく、今、進行中であることを直視しなくてはいけない。

【奈良保険医新聞第275号(2005年5月10日発行)より】

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