奈良県保険医協会

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「後期高齢者診療料の届出、算定は慎重に」―会員へ呼びかけ/奈良県保険医協会

 奈良県保険医協会では4月の定例理事会で、後期高齢者診療料について下記のように医科会員の皆様に呼びかけることを決め、ファクスと郵便で医科会員へ文書を届けました。


2008年4月18日
医科会員各位
奈良県保険医協会
理事長  谷掛 駿介

後期高齢者診療料の届出、算定は慎重に

 今回の診療報酬改定で、後期高齢者独自の診療報酬が設定され、「後期高齢者診療料」が新設されました。

 奈良県保険医協会は、4月17日の定例理事会で、後期高齢者診療料の届出・算定について、どう考えるべきかを協議した結果、後期高齢者診療料の届出・算定に慎重な対応を会員に呼びかけることにしました。
 理由は次の通りです。

(1)後期高齢者診療料は、国民皆保険の理念に反して、高齢者に差別医療を強いる「後期高齢者医療制度」の具体化の一つだからです。
 特定の年齢で受けられる医療内容に差別を設けている国は、世界に例を見ません。
 国民や医療担当者の強い反対もあって、後期高齢者診療料を選択しなければ、従来どおりの一般医療での出来高請求ができるようになりました。厚労省は「医療内容が差別されることはない」と、差別医療の否定に躍起になっていますが、それならば、何故わざわざ後期高齢者独自の診療報酬を設けるのでしょうか。
 後期高齢者医療制度は、医療費適正化(=抑制)を目的にした法律(高齢者医療確保法)を根拠法としているため、後期高齢者向けの診療報酬を設定する場合は、必然的に医療費を抑制する点数設定となります。
 私たちは、高齢者を差別する別建ての診療報酬の導入に反対してきましたが、改めて高齢者に負担増と差別医療を強いる「後期高齢者医療制度」の中止・撤回を要求します。

(2)後期高齢者診療料の新設を契機に、1患者に1つの主病しか認めず、その慢性疾患管理を1医療機関に限定する考え方を導入しているからです。
 後期高齢者診療料は、高齢者への安上がりな医療の提供と重複受診の制限により、高齢者の医療をコントロールする役割を、開業医に押しつけるものです。これは、実質的にフリーアクセスを制限するもので、国保中央会が提案している「人頭登録制」に通じる危険を感じます。
 高齢者の多くは、複数の慢性疾患を併せ持ち、複数の医療機関に受診することも少なくありません。各科にまたがる多様な病気を抱えている場合が多く、診療体制が専門分化している現状の中、一人の患者を一人の医師だけで医学的に管理することは困難です。
 今回の後期高齢者診療料を契機に、実質的にフリーアクセスが制限される方向へ踏み出すことは、地域の医療連携を崩すことにもなりかねません。

 以上の理由から、今回の診療報酬点数の運用にあたっては、後期高齢者診療料の届出および算定について、慎重な対応を呼びかけます。


 なお、後期高齢者診療料をはじめ、一つひとつの診療報酬の算定、その採否は、各保険医療機関がよく検討して判断されるべきことですので、会員各位の判断・行動は、当会としては尊重する立場です。上記のよびかけは、そうした基本姿勢のうえで、会員各位に熟慮をお願いしているものです。

 後期高齢者診療料は、医療費抑制のための後期高齢者医療制度の入口となる診療報酬点数です。
 当会では、医療費削減を主眼とした後期高齢者医療制度には、制度改革の法案段階から反対してきました。制度の実施にあたってもなお、現場にも混乱を招き、何より高齢者、患者さんへの適切な医療の提供を妨げかねないものとなっています。
 老人クラブの皆さんへ当会からお送りしたリーフレットの署名ハガキが、わざわざ50円切手を貼って、少なからず返送されています。たくさんのご意見も記載され、暮らしが脅かされることへの不安や不満が、切々と述べられています。
 私たちは、後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めています。


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