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主張

2020年2月15日(土)

高額医薬品の問題点

国民医療費に占める薬剤費の増加
 近年、新しい治療薬が次々と開発され、従来では治せなかった疾病の一部に効果が認められる時代になってきた(表1)。しかし、画期的な新薬には多額の研究開発コストが掛かり、驚くほど高額な薬価が認定された結果、最近の年間の国民医療費約42兆円のうち、薬剤費は約10兆円、その中でがん治療薬は約1兆2000億円となっている。
表1 高額な医薬品の主な例
商品名治療対象薬価(万円)
キムリア点滴静注B細胞性急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫3349
ステミラック注脊髄損傷1495
スピンラザ髄注12mg乳児型脊髄性筋萎縮症932
ノボサーティーン静注用2500先天性第将薫子欠乏症364
セヴァリンイットリウム(Y90)静注用セット低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫260

高薬価新薬を生み出す価格算定方式の問題点
 1982年に療担規則、薬担規則が改正されてより保険薬は全国統一の薬価基準となり、その薬価を定める薬価算定組織(中央社会保険医療協議会、中医協)(通常の構成員=保険者7名、医療側7名、公益代表6名、専門委員10名)は概ね薬価を下げる姿勢を貫いてきたが、国内の製薬メーカーの意欲を削がないように、新薬の価格設定に関しては原価計算方式で製造原価、研究費、消費税などを積み上げて薬価を計算し、さらに新薬創出加算を加えて便宜を図っていた。
 しかし、近年の新薬は原価計算の中の製造原価ならびに研究費が膨大でかつ内容が不透明であるものが多い。それは製薬メーカーの多くが外資系であり、その原価計算の中にベンチャー企業を買収したコストが入っていることが知られている。実際には製薬大手ノバルティスファーマの白血病に効果のある新しい治療(CAR-T療法)で使用される免疫療法製品「キムリア」は欧米では4000〜5000万円で今回の公定価格は3349万円となった。しかし同じメカニズムの治験製剤が名古屋大学で臨床試験がはじまっており、製剤の実費は100万円程度で済むと報告されている。

これからの課題
 外国の大手の製薬会社が創薬した新薬の価格は企業の利益を確保するために投資した金額に見合う設定になるのは当然である。しかし、医療がビジネスであり社会保障がない自由診療の医療では適正な価格であっても、医療が社会保障であり国民皆保険の日本ではその価格は認められない。目的が企業の利益ではなく、国民の健康であるからである。その資金は国民全体が負担しているものだからである。したがって日本で新薬を販売したいのであれば、日本の土俵に乗ってもらわなくてはならない。
 中医協で高薬価新薬を算定する際には、外資製薬会社が提示する価格の内容を精査して、企業の利益を優先する原価内容を排除して厳重に査定すべきである。

【奈良保険医新聞第449号(2020年2月15日発行)より】


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